第21話

大胆にも俺の家に例の男が来るらしい。


俺が気がつかないだけで今までそんな事もあったんだろう。



そう思ったらまた吐き気を催してトイレに駆け込んだ。



俺は、そんな不貞が行われてるとは知らずにあの家で幸せな生活をしていたんだ。



営業のドサまわりから解放されて家に帰るのが楽しみだった。


いつも笑顔で迎え入れてくれる蓮の成長を喜んで、同じようにおバカになって腹から笑って、由香里が作ってくれる料理をたらふく食べてありがとうと愛してるを毎日のように伝えていた。


俺は幸福感に満ちた生活をあの場所でしていたはずだった。


なのに・・・・随分と前からあの二人に汚されていた。


それがどうしようもなく悔しくて、どうしようもなく情けなくなる。



「う…ううう…」



人前で泣くことなんて、働くようになってから一度もしたことがないのに、この時ばかりは佐藤に背中を擦られながら泣き続けてしまった。




「くっそ…、許せねえ」




後ろで佐藤が小さく呟く声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る