第8話

「母さんが言いたいのはそういうことじゃないの。あなたに似ているところが少なすぎやしないかいってこと」


テレビに視線を向けたまま深いため息をつく。



「子供の顔なんてコロコロ変わるでしょ?」


「そりゃ蓮人だってコロコロ変わってきたけどさ、あんたの小さい時に似ている時期がないんだもん」


「へぇ~、おれがこのくらいだった時覚えてるの?ジジババに預けっぱなしじゃなかった?」



26歳にもなってこんな事を言う自分が情けない。

でもこの手の話をしたら母親はもう追及してこないって分かってて発言したんだ。


シングルで働きながら俺をここまで育ててきてくれた恩はあるのだけれど、この手の話をして欲しくなかった。



そんなことは自分が一番思っていることなんだ。


風呂に入っている時、撮りためた写メを見返している時。


心の奥底で密かにそう思ってしまうけど、一生懸命気がつかないフリを通してる。



このことをはっきりさせてしまうと正気でいられる自信がないからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る