第34話 竣工祝いBBQ~美幸王妃誕生


 王国暦245年 12月30日 12:00


 感動の渦も落ち着いて丁度お昼時になったので、タイセーの提案によりツインタワーに挟まれた中庭で"1中庭BBQ大会"が行われた。


 牛、豚、鶏、魚介類、新鮮野菜等々。

 盛り沢山の高級食材を、惜しみ無くギフトショップから取り出すタイセー。

 王都から到着したばかりのイチローと護衛騎士含め総勢220人。

 1ヵ所10人、22セットの炭火焼きBBQ大会。

 そこにヨシノブ・ヨミウリ国王陛下の一声が更に皆を盛り上げた。


「第1回BBQ大会!ワシ等は以前タイセーにご馳走になったが、ほとんどの人が初めてだろう。

 新宮殿への引っ越し作業は明日にして、まだ真っ昼間だが今日はもう無礼講。

 みんな食べて飲んで大いに英気を養おう。

 タイセー、生ビールにワインも出してくれ。」


「やったーーー」

「きゃーー陛下ステキーー」

「国王陛下バンザーイ」

「「「バンザーイバンザーイ」」」


 新築ピカピカ50階建てツインタワーを見上げながらの大宴会。

 タイセーの光結界で真冬の北風もシャットアウト。

 スキル環境変化により気温も20℃に設定され、全員飲めや歌えの大騒ぎ。


「あ~食った食ったもう入らん。本当に美味かったなぁ。

 タイセーの出すの食材は何でこんなに美味いんだ。

 いつかこの国でも、これだけ美味い物を生産できるようにしたいな。そしたら俺達だけじゃなく、ヨミウリ国民全員が食べられるようになる。それが俺の1番の夢だ。」


「いい夢だな。イチロー兄貴、絶体叶えなきゃいけない夢だ。

 俺達国の中枢部の人間だけが、こんな美味い物を食べてるような国は必ず滅びる。

 兄貴の夢を実現させるため俺も協力は惜しまない。」


「ありがとうなタイセー。国民全員が食べれて、学べて、職に就けて、家庭を持って次の世代を育てる。

 そしたらみんなが笑えるんじゃないかな。

 俺は侯爵家の次男に生まれただけでも恵まれてるのに、明後日からヨミウリ王国の第2王子だってさ。

 まさか自分が王族になるなんて想像もしてなかったが、決して浮かれちゃいない。

 王族にはそれだけの重い責任があるんだ。

 だから夢を実現させるため努力は惜しまないぞ。

 そこにタイセーが協力してくれたら鬼に金棒だw」


「とてもステキな夢ですねイチロー義兄さま。」


「そうか、ラブリーがそう言うなら間違いないなタイセー。」


「ああ、兄貴はのくせに、たま~に凄く良いことを言うんだよなw」


「脳筋は余計だぞ、それに人外にだけは言われたくないw」


 子供の頃から大男で力持ち。だけど弱者を助ける優しい心を持ち、時には庶民達に混じって農作物の収穫や魚の水揚げ等を普通に手伝う、良い意味で貴族らしくない2歳年上の次男イチロー。そんな真っ直ぐな兄の事がタイセーは大好きでした。


「そうだBBQはまだ続いてるが、イチロー兄貴これからちょっと付き合ってくれないか?」


「ん?まあもう満腹だから別に良いが、新築宮殿49Fにある自分の部屋を早く見たいんだがな、何処に行くんだ?」


「アレックス兄上のとこに宮殿設置をしに行こうかと思ってるんだ。

 ラブリーにはBBQが終わったら明日の引っ越し作業に備えて、家族と執事に宮殿内部の案内を頼んでるから。

 兄貴飛翔魔法レベルMaxだろ、少し手伝ってほしいんだよ。」


「そうか兄上のとこか。ここの宮殿設置、神の奇跡だったと皆騒いでたからな。俺は間に合わなくて見てないし、兄上のとこで見せて貰おうかな。」


「よっしゃ決まりだな。石橋路面の仕上げだけ完成させて来るから5分だけ待っててくれ。」


「おう、どうせだから見せて貰おうかな。」



 石橋仕上げも無事終わり、アレックスにも念話で用件を伝え国王の元に。


「父上、ラブリーにデザート・スイーツ・フルーツを全員分とお土産も渡してますので、BBQ終了前に配って頂きたく。

 石橋路面も終わりました。

 雨に濡れても滑らないよう仕上げてます。」


「うむ何から何まで御苦労であった。御礼と言ってはなんだが、東京王国も住民ゼロでは国とは呼べまい。

 先週から移住者を募ってみたら、たった1週間で希望者が既に10万人を越えておる。

 タイセーが作ってくれた新宮殿の対価として、住民を使うのは心苦しくもあったのだがな。

 しかし強制では無く自ら移住を希望する者達と、今一番タイセーが必要であろう自国民。

 金銭では買えぬ貴重な存在こそが、新しい国の門出に相応しいのではないかと思ってな。

 父親としての気持ちだ。全員連れていって幸せにしてくれ。」


「10万人……そんなに……ありがとうございます父上、いや国王陛下。」


「よせタイセー、明後日からお互い国王となる。

 国は違ってしまうが実の親子に変わりはない。

 これからも呼び方は同じで構わん、ワシもカエデもそうする。

 お前も今まで通り父上と呼べばいい。」


「はい父上。お気遣いありがとうございます。」


「ああそれと移住の件だが10万人は第1陣に過ぎんぞ。年明け落ち着いてから第2陣の募集も行う。先発組の東京王国への印象が良ければ、次はもっと大量の希望者が出る。

 今月ワシとアレックスの事を優先してもらったのは有難いが、来年からは自分の国内整備に、もっと力を使いなさい。」


 父親として子を思うヨシノブの気持ちに感激するタイセー。


「タイセー。私からも母親として1つ相談があるんだけど聞いて貰えるかしら、」


「はい母上。自分に出来る事なら何なりと。」


「いま陛下が仰っていた、新しい国に絶体必要な自国民と同じ位、重要な事です。

 貴方は国王陛下になる。ラブリーちゃんと言うステキな2王妃もいるわ。

 でも誰にも解決できない事情があるからこそ、彼女は自らを2王妃として下さいと申し出た。

 その決意をタイセー、夫として貴方は正面から受け止めるべきかと母は思いますが、如何ですか?」


「母上…国王として第2王妃はいるのに、第1王妃不在というのは自国民に不安を与えます。

 また外交的観点からも、決して良い印象は持たれない事も自覚しています。」


「理解はしているのですね。」


「勿論です。しかし国王とは言え自分はまだ来年16歳の学生。

 結婚を許される成人18歳には後2年以上の月日が残されてます。

 その間に縁談の申込み等もあるでしょうし、学園内で気になる女性と出逢う事もあるかと。

 その際には父上母上にも相談しますので、何れまたその時に。」


「母にも相談すると聞いて安心しましたよタイセーw!!」


『ん?この笑みと獲物を逃がさない様な鋭い目付き!この顔をする時の母は父上でも逃げ出すSランク相当のカエデの顔だ!!』


「そうだ!クロマティあの件はどうなっておる!」

 ガタッと椅子から立ち上がり、その場から逃亡するヨシノブ国王


「陛下?あの件とは?」


「あの件と言えばあの件だろ!」


 あっと言うまに2人は消えたw


『なんだ?明らかに逃げたよな…パパ……』


美幸ミユキちゃん。こっちに来なさい。」


「はい、王妃様。」


「えっ?ミユキか?何で瑞穂王国公爵令嬢がメイド服を着てここにいるんだ?」


「タイセーには言ってなかったわね。

 東京王国視察から帰ってきたその日から、ミユキちゃんは私の専属護衛としてメイド姿で仕えてるのよ。」


「はっ?いや何で?てか学園はどうした?」


「少し早い冬休みを頂きました。」


「あ~俺と同じだな。」


「タイセー陛下。今から言うことは母である私からの、最初で最後の頼み事です。返事は""しかありません。宜しいですか、宜しいですね、ありがとう」


「……………(汗)」



「イ、イチロー…ちょっといい…」

「おお…俺も今…丁度アジサイに話があったんだ…」

椿ツバキも…2人に話があったの……」

「そう、じゃあ行きましょう……」


 兄姉妹も危険回避能力に優れている……


「特Sクラスに編入して2人が同じクラスなのは母も聞いてます。

 来年になっても母の専属護衛として、美幸ちゃんには居てほしいんだけど、それだと学園に通えなくなるでしょ。」


「確かに無理ですね…」

『ラブリー何だこの流れは?何か知ってるか?』

 すると念話にも関わらずラブリーが喋った。


「聞いてますよダーリン♡でも今はひ・み・つ」

 と言うとカエデ王妃とミユキにニコッと微笑む。


「無駄よ!タイセー。念話でラブリーちゃんに確認するのは想定内だから。」


「………」


「単刀直入に!!瑞穂王国バーランダー公爵第1公女、美幸ミユキ・バーランダーを1王妃として東京王国宮殿に御迎えしなさい。

 学園にも2人で転移で通えます。この件はラブリー・エリザベス2王妃の快諾を得ています。」


「なっ!!!!!」


「ダーリン♡私は嬉しいです。やっとダーリンの赤ちゃんに会えますから♡ミユキちゃんとってもカワイクて優しい人なんですよ♡この間も2人でいっーぱいダーリンのオシャベリをしました。初めての女子会♡楽しかったなあ。でもこれから毎日女子会できますね。ミユキちゃん♡」


「ラブリーちゃん」

 また真っ赤な茹でダコ状態でポツリと呟く美幸嬢


「あ!!もしやあの時か。AI機能Version up で10時間眠ります。って」


「ピンポーン正解ですダーリン」


「タイセー返事はどうしましたか?」


「グッ!……」


「グッ!……なんて返事この世にありませんよ!!まして母親にそのような!!!」


「タイセー様。突然このような事態になり申し訳ございません。

 ですが私は殿方に対して、胸が張り裂けそうな気持ちになったのは生まれて初めてなんです。もしタイセー様が私の事を受け入れ難いと言うのであれば、このまま瑞穂王国に戻ります。」


「駄目よ美幸ちゃん。そんな事このが許しません。」


「母って…王妃様…」

『母って…オフクロ…』


「そうですよミユキちゃん♡それとも私のことがキライですか?悲しいです…」


「そんなラブリーちゃん…」


「ちょっ、ちょっと待て!誰も受け入れ難いとか言ってないだろ。まだ一緒に暮らしてもいないのに…」


「宜しいタイセー、返答は"はい"でいいですね。」


「分かりました母上。だが1つだけ美幸に言っておく事がある。」


「はい、なんなりと♡」


「知っての通り俺は猛烈に忙しくなる。

 東京王国国王としてだけじゃない。

 俺を育ててくれたヨミウリ王国とセリーグ王国。美幸故郷の瑞穂王国。このすべての国民にイチロー兄貴の夢を叶えるを送らせてやりたい。

 そのために転移を使いまくり飛び回るつもりだ。


 勿論、美幸にもラブリーにも手伝って貰う事が山ほどあるだろう。

 俺の妻になると言う事は、そういう事なんだ。

 その覚悟はあるのか美幸・バーランダー第1公女。」


 あれだけ騒いでいたBBQ会場が水を打ったように静まり返り、その場にいる全員が美幸の答えを聞き逃すまいと待っている。

 国王・執事・3兄姉妹達も…


 茹でダコ状態から一変して、いつもの凛々しく麗しい美女に戻った美幸


「貴方様の妻として、貴方様の愛するもの全てを私も一緒に愛し、貴方様の信じる道を私の信じる道として、この生涯をかけて歩んでいく覚悟はとうに出来ております。

 これまで武術魔術を極めるため精進して参りました。

 女性としての家事等は些か不束で御座いますが、これより勉強致します故、何卒末永く宜しくお願い申し上げます。」


「「「おおおおおーーー」」」


 美幸の覚悟を示す魂の返答に、会場中が感嘆の念を抱いた。

 若い2人のやり取りを邪魔しないよう小さな声で、うっとりとした心持ちのタメ息が漏れる。



 その時、腹の底から出る大声が会場中に響き渡り

「あい分かった!!美幸バーランダー当家の嫁として申し分無し!!これからすえな………」


「だまれーーーーー!!!」

 ビリビリビリビリビリビビリ

 ブスブスブスブス


「ぎゃあーーーーー」

 ドサッ感電死寸前の黒焦げ状態で俯せに倒れるヨシノブ国王陛下…


 カエデ王妃のレベルMax雷魔法が久しぶりに炸裂した瞬間

「あら3年ぶりだから加減が難しかったわ。これがほんとのカミナリを落とす…だわね…うふっ」


「「「………」」」


「美幸、ラブリー今ので分かったと思うが」


「…絶体に母上には逆らいません。」

「…ラブリーこわい」


「タイセー後でいいから回復魔法かけといてね、後でいいわよ頑丈だから国王陛下だものw」


「タイセー早くかけないと父上の体から煙が出てるぞ…」


「イチロー兄貴、アレックス兄上のとこ明日にしよう…俺達が話し相手にならないと…父上が不憫すぎる…」


「そうだな…回復後の父上を慰めないとな…」


「美幸、ラブリーそういう事だから、みんなにお土産配ってくれ。それ終わったら今日はもう東京に戻ろう。父上をベッドに運んでくる、また後でな。」


「はい

「ダーリン♡かしこまりー」



 騎士団員や使用人達参加者全員に、第1王妃と第2王妃2人でお土産を配り、先程の様子を観ていた全員から祝福の声がかかる。



 ヨシノブ国王陛下?


「タイセー回復魔法ありがとう…一番いい場面で…済まなかったな…感動してな…つい…」


「…もう済んだことですからお気になさらず…

 では父上これから東京に戻り、明朝兄上の宮殿を設置後、また来ますので。

 それと母上に今日中に謝った方が良いかと。」


「父上…タイセーの言う通りです。」


「…イチロー…タイセー…その…なんだ…カエデの部屋に…一緒に行って」


 シュン

 タイセーは転移で消えました。


 ビュン

 イチローも窓から飛翔で消えました。



「………できれば…俺も消えたいんだが…」


 ーーーーーーーーーー


 国王陛下でもTPOをわきまえた方が良いって事だなm(_ _)m


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