第4話 魔王復活の足音

 王国暦243年10月


 魔王島

 セリーグ王国南800kmにある島国

 面積10万k㎡(北海道約1,2倍)

 魔族500人 魔物多数


 島全体が濃い魔素に包み込まれている魔人と魔物の楽園。

 その中央部の深い森に瓦礫だらけの場所がある。元の魔王城だ。

 しかし強力な結界が張られ魔人ですら近寄る事は無理。

 だが3年前に地下深くから、僅かに少しずつ漏れ始めた弱々しい魔力に魔人達が気付く。


「この闇魔力なんなんだろ。」

「ああ、まだ弱々しいが心が休まり力が漲る。」

「心なしか俺の魔力も増えた気がするぞ!!」


 皆に長老と呼ばれる年老いた魔人が懐かしそうに語る。

「こんな良質な闇魔力を出せるのは魔王様しかおるまい。」


 それに同意する現魔王島統括・元四天王生き残りデビル・カブレラ

「確かにそうだな。まだかなり弱いが魔王様に違いない。」



 魔王の亡骸が眠るその地から本能を揺さぶるような、魅力的な闇の魔素が魔人島全域に行き渡り島を活性化していく。


 甘美な誘惑に惹き付けられる500人の上級魔人達。連日入れ代わり立ち代わり訪れるようになって2が過ぎた。

 **********

 王国暦245年10月


「ううううう!!これ以上は無理だあーー!!」

「この結界さえ破れたら魔王様の元に辿り着けるのに…」

「無理やり突っ込んだら全身が痺れ動けなくなった。」

「誰か突破出来ないのか?」


 かつて魔王バースを頂点にカブレラ他四天王を擁し、その爆大な魔力と強烈な魔術でフェンウェイ・パーク大陸を支配した魔族たち。


 だが245年前

 ナガシマ・セリーグとマツイ・ヨミウリ率いるゲリラ軍に四天王の3人を倒され、魔王バースは一命を取り留めたものの、魔王城地下牢に封印されてしまった。

 魔王から供給される強力な闇魔力を失い、下級魔人含め15万人もいた魔人達も弱体化。

 島の魔素のみで動くSランク魔物達の餌食となり、今は上級以上の魔人500人が辛うじて存在している。


 魔人A「魔王様完全復活には人間の魂。それも恐怖と絶望にまみれた無念の塊ほどお気に入りだ。」


 魔人B「人間か。しかし人族の住むフェンウェイ・パーク大陸まで800kmの距離があるぞ。」


 統括デビル・カブレラ

「今の俺の闇魔力飛翔では大陸までギリギリだろう。帰ってくる魔力の回復にも半年はかかる。だが何れにしろこのままでは我ら魔族は滅亡を待つのみ。最後の手段は上級魔族50いや30人でいい。俺に魔力を提供してくれれば、人間を傀儡化し奴らの船で拐って来るんだが…」


 長老

「魔王様さえ復活すれば皆に極上闇魔力を注入して貰える。問題はそれまで統括に魔力を渡した30人をSランク魔物から守ることじゃ。個人主義の我等魔族、魔王様が居らぬいま人間のように纏まる事が出来ぬ。」


 魔人A「魔力が無い間ほんとうに守ってくれるなら、俺と一族5人カブレラ統括に提供するぞ!!」


 魔人B「俺もだ、家族含め3人分の魔力を差し上げる。」


 長老

「わしの一族郎党13人も強制協力させよう。」


 統括デビル・カブレラ

「あと9人か…魔力無しになる皆の守りも含め、無念だが奴に頭を下げるか…」


 長老

「おおそれが良い。亡くなった四天王筆頭の息子ブーマーJr.と御主は不倶戴天ふぐたいてんの間柄じゃが、滅亡するのを防ぐにはそれしかないじゃろう。」


 統括

「長老時が無い、至急会談の座を取り持って頂きたい。」


 長老

「いま直ぐに動こう。デビル・カブレラ統括の英断、無駄にはせぬ。」


 **********


 ブーマーJr.

「わははははーーそれは愉快だ!!

 カブレラの野郎やっと俺の下に付くか」


 長老

「…そうでは無い。魔王様復活のため御主と協力したいのじゃ。上も下もなかろう。」


「フン!!まあいい。俺に頭を下げるのは事実なんだろうな。」


「ああ必ずワシが下げさせる。」


「分かった。親父の戦友だった長老が言うなら協力しよう。条件はカブレラが俺に頭を下げる!!それだけだ。」


「事は急がねばならん。今から"会議の森"へワシと同行してくれ。そこでカブレラ統括に頭を下げさせよう。」


「おうよ!!じゃあ翔ぶぞ!!」


「ああ飛翔!!」

 *****

 "会議の森"


「………と言う事じゃ。ブーマーJr.の条件はただ1つ、カブレラ統括が頭を下げるのみ。」


「…分かった……。ブーマーJr.此度の件宜しくお願いする、この通りだ」


 椅子から立ち上がったカブレラ統括がブーマーJr.に深々と頭を下げる。


「わははははーー良いだろう。俺も四天王筆頭の嫡男だ約束は守る。その代わりカブレラ、魔王様が復活し魔王軍再興の折は俺様が軍事筆頭になる。お前は俺の部下だ!!文句は無いなw」

 

長老

「待てブーマーJr.よ、条件は1つだけのはず。カブレラ統括は実行したではないか。それでは話が違う」


 ブーマーJr.

「確かに残り9人の上級魔族魔力の提供と、30人守護の件に関しては既に済んだ。だから俺と一族の者達は協力する。」


 長老

「ならば何故?」


 ブーマーJr.

「事が上手く行けば対価として報酬を手にするのは当たり前だ。それが古来から魔族に染み付いた慣習だろう?そんなことガキでも知ってるぞw」


「しかし…」


「良い長老。個人主義の我々魔族が手を結ぶには、ブーマーJr.の言うとおり対価は必須。魔王様に皆が従うのも闇魔力供給の対価があるから。魔王軍筆頭の座は御主で構わない。俺の願いは魔王様復活のみ!!魔族滅亡さえ防げれば御主の下に就こう。」


「よし!!話は決まった。長老"会議の森"でしか出来ない始めてくれ」


「良いのか?カブレラ統括。は例え魔王様でも違える事は出来ぬぞ」


「ああ今言ったはずだ。俺の願いは魔王様復活あるのみ!!」


 そう言うとカブレラ統括は左手親指に傷を付け、血を1滴"会議の森"にしか生えないに垂らす。

 ブーマーJr.もカブレラの持つ葉に同じく垂らした。


 その葉を受け取った長老が約定内容を呟くと、漆黒の闇にが吸い込まれ消滅する。


「「ぐうっ!!」」

 カブレラ&ブーマーJr.の頭に激しい痛みが一瞬だけ襲う。同時に★が額に現れた。


「無事が成りました。もし約定を違えた者には先ほどの痛みが全身を蝕み、10日間苦しみ抜いて消滅します。どちらも約定を厳守するように。」

 と長老が宣言する。


「「魔神様に誓って!!」」


 上級魔族30人分の闇魔力を注入されたデビル・カブレラ統括は溢れるパワーで人族の住むフェンウェイ・パーク大陸に翔び去った。


 僅か1時間後、セリーグ王国マクガフ公爵家屋敷内にある厩舎に現れたカブレラ統括。


「なるほど、どす黒い闇のオーラを探知し飛翔してきたが、人間のくせに我等魔族と変わらぬような悪しき心だwこれなら傀儡にするのは容易い事よww」


 Sランク魔物やメジャー帝国の侵略をはね除け、245年間守り続けてきたセリーグ王国の安寧の日々。

 それがいま風前の灯になろうとしていた…


 ーーーーーーーーーー


 マクガフ公爵家

 デストラーデ・マクガフ公爵(47歳)祖父が10世国王の弟でジーター12世セリーグ国王とは又従兄弟またいとこ


 セリーグ王国・国王の座を密かに狙う極悪非道公爵。

 オドア影部隊隊長・Sランク冒険者等を使い、様々な悪事に手を染めている。国王直属隠密部隊の捜査にも巧みな証拠隠滅を図り続け、いまだに確信が得られていないのが現状。



★が額に現れた。

作者も★が欲しいなあ。

出来れば★★★三ツ星などm(_ _)m


 

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