第2話 空間魔法・ギフトショッピングモール・魔力∞って

 王国暦245年10月


 ヨミウリ侯爵領の南にあるオオテマチは800万人の人々が暮らす領都。

 オオテマチ軍港からの浜風が侯爵屋敷庭の木々を揺らす。その自室でタイセー・フォン・ヨミウリ侯爵家三男(15歳)は騎士団との稽古に向かう前に日課の瞑想をしていた。



 コンコン

「開いてるよどーぞ。」


「タイセー様失礼します。」

 ノックの後メイドのミーナが入ってきた。


「明朝の王都スイドウバシへの出発準備が整いました。追加の荷物があるかの確認をするよう、クロマティ執事に言われたのですが如何ですか?」


「あーそれなら打合せ通りだから大丈夫だよ。ミーナの方こそ大好物のリンゴ飴忘れないようにねw」


「ハイしっかり鞄に入れました。でもその言い方だと私が食いしん坊みたいじゃないですか。」


「えっ?違うの?」


「うう、違わないけど違います!!リンゴ飴で糖質とビタミンを補給。いつ如何なる時も護衛任務を全うするエネルギーチャージ食なのです。」


 タイセー専属メイドのミーナ(15歳)

 ヨミウリ侯爵家寄り子アウトマン男爵家の3女。オオテマチ学校中等部3年に通いながら行儀見習いとして今年4月から1年間のメイド修行中。

 風魔法レベルが高くスキル風剣ふうけんの鋭い切れ味は、ヨミウリ騎士団精鋭からも1目置かれている。

 タイセーの護衛を兼ね専属メイドに配属されていた。


「ハハハ流石アウトマン男爵家の風剣姫。でもほんとに良かったの?せっかくオオテマチ学校に馴れたのに一緒に王立ドーム学園に編入って。」


「タイセー様の護衛は私の天職です。同じ学園に通い御守りするのは当然の事かと。」


「えっーと、誰と戦う気なのかな?」


「何の心配もございません。タイセー様に近づく悪い虫どもは一匹残らず蹴散らします。」


 武の名門ヨミウリ家が生んだ天才剣士タイセー。その剣術の強さ凄さにすっかり魅了されたミーナ。尊敬と共に強烈な母性本能が芽生えてしまい、タイセーを護ることが自らの天命と激しい思い込みをしている。


「そ、そうか…まあ気合い入れるのも程々にね。じゃあヨミウリ騎士団との稽古に行ってくる。王都暮らしになるので侯爵家での鍛練も暫く出来ないからね。」


「はい畏まりました。では失礼致します。」


 ミーナが部屋を出て騎士団練兵場に向かおうとしたその時。

 真っ白な神々しい光に全身が覆われた。


「うっうう」


 突然の事に驚きはしたが痛みなどは無く、寧ろ心地良さと多幸感に包まれる。

 それと同時に「これは?」

 タイセー(15歳)の人格に大蔵大晴(25歳)が雪崩れ込み9割以上を占める。15年間の記憶を残しながらも人格等は令和の大晴となった。


『……………という訳です。色々迷惑を掛け申し訳ございません。今後はタイセー・ヨミウリとしての人生を全うして下さい。お詫びと言ってはなんですが女神の加護を授けます。

 魔力∞・空間魔法・光魔法・身体強化・超強力女神スキルとギフトショッピングモール令和版を与えますね。おまけに剣神の加護も授かるよう申し込んでおきます。ではこれで"おさらばぇ~"』


 光が消え去った後ハッキリと覚醒したタイセーは現状を把握。


「"おさらばぇ~"って何だよ?でも完璧転生したなこれ。大蔵大晴には戻れないって美人女神ビューティーさんが言ってたけど、だったらせめて25歳に転生させて欲しかった。

 ビールぷはぁ~できねぇじゃん。」


「どれ少し記憶整理するか。」

 タイセーの記憶を探る。


『ヨミウリ侯爵領地

 150万k㎡(日本の約4倍)の広大な領地に2,500万人が暮らす。

 領都オオテマチは人口800万人を誇り王国第2の大都市。


 領地北側の東西700kmを侵略国家メジャー帝国と接する。国境地帯の守り神として建国以来240年もの間、帝国の侵攻を防いできた。

 王国内では別名"抑止力侯爵"と呼ばれ、王国1の軍事力を持つ武門筆頭として他貴族から畏怖されている。』


「なるほど王国1の軍事力に天才剣士か悪くねぇな。少なくとも令和であのまま普通の人生送るよりましかもな。魔物はどうなってる?」


『同じく領地北側には魔の森が存在し東西200kmに渡り接しており、王国最大の冒険者ギルド・ヨミウリ支部がある。』


「ほお冒険者ギルドか、王立ドーム学園行く前に登録だけしとくか。」

 

『えっ!!登録するの?冒険者になるの?』


「何だよいきなり口調まで変わってビックリするじゃねえか。15歳のタイセーだな、記憶だけじゃなく俺と会話も出来るのか?」


『会話って言うのかなこれ?強いて言うなら念話かな?まあ僕の知ってる事なら全部委譲済みだから、自然に知識として大晴オジサンの身に付いてるよ。』


「…おい俺はまだ25歳だオジサン言うな。」


『ごめんなさい。大晴オッサンって呼ぶねw』


「わざとだろ、しばらく消えとけ。」


『プツン………』


 タイセーとの繋がりを一時的にオフにする。


「後はこの国の生い立ちの復習かな。」


『魔物とメジャー帝国二つの強力な敵と相対する重要なこの地に、初代国王ナガシマ・フォン・セリーグは建国の英雄で自身の一番弟子マツイ・ヨミウリを配置。王国守り神として侯爵の地位を与え、税制や開発費&軍事費等の補助金・王国内待遇等あらゆる面で超優遇、それは今でも続いている。


 その後ヨミウリ家と王族家の間で婚姻・養子縁組等の縁もあり、変わらぬ忠誠を誓うヨミウリ家に公爵の地位を授けようと過去に何度か打診する。


 しかし初代マツイ・フォン・ヨミウリ侯爵の遺言「我等ヨミウリ一族はセリーグ王国守り神として軍事力のみに特化する。あらゆる政争に関与してはならん。よって侯爵以上の陞爵しょうしゃくは固辞する事を永遠に守るべし。」

 その言葉を240年後の今も謹厳実直に守り通している。』


「わーーー出世を固辞って引く程カッケーなっ。しかも御先祖様はヨミウリでマツイ。う~んどうしたって松井秀喜さんが思い浮かぶ。初代国王ナガシマさんだし。」


 そこでタイセーは女神の言葉を思い出す。


「女神の加護を授かった事はタイセーの記憶には当然無いし、確認するにはあのセリフか?」


 ここでステータスオープンと小声で呟やく。令和の人間で25歳だった大晴には、中二病的セリフを大声で叫ぶ勇気は無い。


 **********


名前:タイセー・フォン・ヨミウリ

 15歳


人種:人間?


職業:セリーグ王国ヨミウリ侯爵家三男


体格:身長180cm 体重72kg


体力:1,000,000(人族Max10万)

魔力:∞(無限大)(人族Max10万)

速さ:1,000,000(人族Max10万)

パワー:1,000,000(人族Max10万)

知能:1,000,000(人族Max10万)


スキルポイント:女神様加護により10億


*****


武術スキル:(レベル1~10)


剣術1,000(Max Over)


*****


魔法:(レベル1~100)


空間魔法10,000(Max Over)

光魔法10,000(Max Over)

身体強化魔法10,000(Max Over)



スキル:(レベル1~10)


収納10,000


容量∞時間停止機能付・生物可能。目視で念じるだけで収納放出可能。転移との複合魔術で陸海空どこにでも取り出せる。

∞の容量を持つため別名エリアタイセーと呼ばれている。


転移10,000


1度の最大転移距離半径5万km。地球を1,25周できる。クールタイム無し何度でも連続使用可能。移動以外の利点として、その場に留まることが可能。空中に浮かぶ事もできる。収納との複合魔術で∞の人・物を触れる必要無く転移可能。


光防御結界物理10,000


光魔法のオーラを魔力∞で物理的結界に変換し防御に用いる。

オーラで出来ているため変幻自在に形成、槍常に変え光速で敵を貫く事も可能。結界とは名ばかりの必殺光オーラ兵器。


投網バインド10,000


光オーラを用いた相手を拘束する網。最大拘束可能範囲は直径1km。1度捕まると、どんな強力な武器兵器魔術を使っても脱出は不可能。


称号

女神の加護

複合魔術マスター

剣神の加護



*****


ギフト

令和版ショッピングモール10,000


いわゆるネットショッピング。

 対価は魔力だが∞を持つタイセーには実質無料。

 地球の物品・生物全て買入れ可能(人間・ペット以外)

 使用後エリアタイセーに収納すると瞬時に新品に戻る修復機能付き。

 買入れ数量も∞のチート機能である。


「人種:人間?って…見なきゃ良かった俺 人外じんがいじゃん… …」


 頑張れタイセー。




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