常識のあるロボット

葉月煉瓦

走り書き

「お待たせしました、博士。」

「久しぶりだな、クライブ君。」

二人は、握手をした。


「それで話とは・・?」


とある酒場での出来事だ。

酒場のマスターは、ロボットに命令した。

「スティーブ、歌を歌ってくれ。」

「かしこまりました。」


スティーブの美声は、ロボットと思えないほど美しかった。

しかし、スティーブは酔いどれに壊されてしまった。

壊れた時、スティーブは歌ってなかった。


「単純に壊れただけじゃないか?」

「いや、壊れたのは右腕で発声装置じゃない。」


この話のおかしな点はここだ。

第二条に従うなら、発声装置が壊れるまで歌い続けないといけない。

なのにスティーブは、歌うのをやめている。

「これは、ロボット工学3原則に反してる。」


ロボット工学3原則

第一条

ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条

ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

第三条

ロボットは、第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。


「それで私のもとに来たわけか。」

「常識をプログラムするのに成功したんじゃないですか?」

「どういう意味だね?」

「人間の場合普通壊れそうになったら、人間は歌なんて歌わないですよね。」

「それならそれで、私たちは事実を確認しなければならない。」


プログラミングコードに目を通した。

「分かったぞ。」

「本当ですか?」


「人間が与えた命令に従わなければならないのは何条かな?」

「2条です。」

「じゃあ、は何条かな?」

「え?」

「このプログラムの中では、人間の与えた命令を、関数の4番目の命令として数えてるんだ。」

「なるほど。」

「ナンバリングでエラーを起こしてるみたいだから、それを直せばいいと思われる。」

「ありがとうございます、博士!」


「しかし、ロボットを壊そうとしないと確認できないぞ。」

「そうですね、犯罪者になる覚悟があるのならば。」

博士は煙草の煙を眺めながら言った。

「人間もロボットも法には勝てないか。」

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常識のあるロボット 葉月煉瓦 @renga_suugaku

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