3-05
「なるほど、ここまでが話の前段ってことだね」
東堂さんはいつになく神妙な口ぶりで、ぼくの説明に対するコメントを述べた。
「まあそうです。っていうか、それだけなんですか?」
「どういう意味だい」
「いつもなら、それは学校案件だとか、飯塚さん個人の問題だとか言うじゃないですか」
「だって、そうじゃないからこうして話を持ってきたんだろ」
「まあ、そうなんですけど」
「お約束のやり取りがなくて物足りないのかもしれないが、今回のは話が長くなりそうだから効率的にいこうと思ってね。って、こんな説明している時点で非効率じゃないか。せっかく人が気を使って話をしやすくしてあげたのに、キミという人はつくづく要領が悪いなあ」
そうそう、東堂さんはこうでなくてはだめだ。
「せっかくのご配慮を無駄にしてしまって申しわけありません」
「まあいいけど。じゃあ非効率ついでに聞くけれど、今までの話はキミが飯塚さんから直接聞いたんじゃないよね」
「有賀経由です」
「この先の話も、だね」
「はい。それと東堂さんが心配されていることはよくわかっています。だから有賀にはくどいぐらい、聞いたままを話せって言いました。自分の感想は抜きでって。だから今回は大丈夫です。――たぶん」
「その点については心配していないよ。最近のキミの献身的ともいえるつぐみさんへのフォローには頭が下がる思いだもの。それよりも今回はつぐみさんの妄想力がいい感じで発揮されてるじゃないか。ドッペルゲンガーまでは誰でも思いつくけど、どっちが分身なのかってのは、普通の人には浮かばない発想だよ。うん、素晴らしい」
それは皮肉ではなく、東堂さんの本心のようだった。有賀が認められたのであれば、それはうれしいことである。ぼくは気をよくして、「では本題に入りますね」と宣言し、その後に起きた奇妙な状況についての説明に移った。
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