1-03
思っていたよりも説明が長くなり、ぼくが一息ついたところで東堂さんからストップがかかった。
「守山君、君がつぐみさんに好意を持っているということはよくわかった」
「は?」
いったい何を聞いていたのだ、この人は。
土曜日の午後、東堂塾は休みだが、東堂さんは授業の準備や採点などの仕事をしていると聞いていたので、航太君のことで助言をもらおうと訪ねてきたのである。
東堂さんは左手に持ったボールペンをくるりくるりと回転させる。
「守山君の語るつぐみさんはたいへん魅力的な女性だからね。このまま聞いているとボクもつぐみさんに恋をしてしまいそうだ」
「あの、ぼくが聞いて欲しかったのは――」
「航太君のことなら話す相手が違ってるよ。ボクじゃない。警察だ」
東堂さんの口元にわずかに浮かんでいた笑みが消える。
たしかにここまでの話ならそう思うだろう。でもまだ本題に入っていない。
「東堂さん、これは警察案件じゃないんです」
「人が死んでいるのに?」
「病死だそうです」
「じゃあ病院もしくは医師案件だね」
「亡くなったハマモト君に関してはその通りです。今さらぼくたちが関わってもどうにもなりません。問題なのは航太君の方なんです」
「じゃあ学校か家族案件じゃないのかな。ボクは航太君を知らないんだよ。そもそも、なぜ守山君がボクにこんな話を持ち込んできたのかがわからない」
東堂さんの言い分はもっともだと思う。かといって誰彼かまわず手当たり次第に相談を持ちかけられるような内容ではないのだ。少し距離を置き、冷静に判断ができて、しかも信頼の置けそうな知り合いは――と考えたとき、ただ一人該当する人物が東堂さんだったのである。
だから、とりあえず話だけでも最後まで聞いてほしい。
ということを切々と訴えた。
東堂さんは肩を落とし、ふうとため息をついた。
「わかったよ。では続きをどうぞ」
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