第62話

琢磨さんの顔の絆創膏は由香の言っていた通りだいぶ目立つみたいで、琢磨さんのいる営業部だけでなく私たちの部署にまで噂になって流れてくるほどで。


 琢磨さん本人は必要以上に話さず、彼女と痴話げんかでもしたんじゃないかと同僚の間で話題にあがったのがきっかけで噂に繋がったらしい。


 私と琢磨さんはお付き合いを公言してなくて、私が社内で話したのは由香ぐらいだし、琢磨さんも本当に仲のいい同僚ぐらいじゃないかな。


 営業部では新垣さんとの関係が公になっているから、新垣さんが話題に巻き込まれているのが心配だった。


 でも、私から何かを言える立場でもないし、琢磨さん自身が沈黙しているなら私は自分の身を守られるから、甘えてしまうことにした。




 あとは、新垣さんとの接触があった時が怖かっただけ。


 営業部に資料を届けにいったときに、今度はわたし一人で琢磨さんとすれ違ったけど、朝を変わらずいないかのようにスル―されて終わった。


 あとでスマホを確認したけど連絡も着てなかった。


 新垣さんとは部署のフロアが違うからすれ違うこともなく、今日はスムーズに仕事を終えて終わることができた。






 デスクを片づけながら時計を確認すると、そろそろ三浦さんが会社の前に着く時間に近かった。



「真穂、今日帰りどうする?一緒に帰ろうか?」


「えと、今日は三浦さんが迎えに来てくれてて…」


 由香に答えながらバッグに荷物を詰めていくと、私が無視できないぐらい盛大なにやけ顔で診てきた。


「愛されてるね、真穂ちゃん」


「……意地悪」


「とっとと告白してきなさいよ」


「………」


 出来たらとっくにしてますよ。


 琢磨さんのこともあったけど、告白して心地いい今の関係を壊すぐらいなら今のままでいいと思っていた。


 今は少なからず、この関係を壊したとしても前に進みたいと思ってる。


 そろそろ、本当に覚悟決めなきゃいけないかもしれない。



「今日、言う。三浦さんに好きって、言う」


「え!言うの!?やっと!?」


「うん、決めた。もう大丈夫な気がするし、不安になってたらいつまでも言えないし、言う!!」


 決断したら気持が軽くなった。


 私は由香に帰る挨拶を済ませてフロアを駆け足で飛び出した。


 廊下を抜けてエレベーター乗り場まで着くと、逸る気持ちを抑えながらボタンを押した。


 エレベーターを待つ間にスマホを取り出し三浦さんにラインを打とうと準備しているとちょうどエレベーターが止まり、音を鳴らして扉が開いた。

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