未来の話をしませんか?

第61話

会社の中に入りエレベーターを待ってる間、琢磨さんと新垣さんに会ったらどうしようって不安が襲ってきて怖くなった。


「真穂」


ーーーポンッ


急に肩に置かれた手にびっくりして振り向くと、きょとんとした顔で私を見る由香がいた。


「あ、…ごめん由香、びっくりしちゃって…」


「…ううん。大丈夫」

 

 悟ってくれた由香が優しく微笑んで、わかってるよ、大丈夫。と頷いた。


 その後すぐにエレベーターが到着して、2人で無人のエレベーターに乗り込む。


「由香、この間は本当にありがとう」


「うん。…あの後大丈夫だった?」


「うん。由香のおかげで三浦さんのところに帰れたし、土日も一緒に過ごしてくれたから」


「よかった。やっぱり真穂には笑顔が一番だよ」


 嬉しそうに笑う由香を見て、私も嬉しくなった。


「由香、好きだよ。ありがとう」


「私も真穂好き。だけど、それは三浦さんに言ってあげてよ」


 次の瞬間、私は声を出して笑ってしまった。

 

 「え、え?なんで?」と驚く由香に私は笑ってしまった理由を話した。


「仲の良いお姉さんにも言われたの。それは"和希に言ってあげて"って」


 RedMoonで繭ちゃんに会ったときに話した事を思い出した。


 私はこんなに周りに分かるぐらい気持が漏れちゃってるのに、未だに三浦さんに言えてないんだ。



「……今回のことで全部が片付いたら、やっと言える気がする」


「大丈夫。きっと言えるよ」


 由香の満面な笑みを見ていたらちょうどエレベーターの扉が開いて、自分たちの部署がある階に到着していた。


 先に降りた由香に続いてエレベーターを降りる。


 由香と一緒に廊下を進むと、たまたま前から資料を持った琢磨さんが歩いてきた。


 私は一瞬体がこわばるのを感じて、それを必死に抑え込み冷静を装ったけど、心臓がバクバクして破裂するかと思うぐらい怖くなっていた。


 琢磨さんの表情は見えないけど、近づいてくるスピードに変わった様子もなく、すれ違うときの接触も何もなかった。


 琢磨さんが通り過ぎた後に俯いていた顔をあげると、後ろを確認して驚いている由香の顔があった。


「由香、どうしたの…?」


「長谷川さん、一度も真穂の方見なかった…。絶対何かしらあると思ったのに、私たちがいないかのように自然に行っちゃったから…」


「ほ、ほんと?由香がいたからかな?」


「どうだろ…。今後も警戒は必要だと思うけど、なんか、…こっちも大丈夫そう?」


「……だといいな」


「真穂見れなかったでしょ、長谷川さんの頬にある大きな絆創膏と紫になってる唇の端。あれ相当目立つよ~」


「……強いね由香」


 面白がる由香に、そんなまじまじ見る余裕があったことが本当にすごいと思った。

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