LAST カクテル

捕まえた子犬に誓いのキス

第58話

――――月曜日の朝


 鏡に映る自分は不安と緊張が入り混じった顔をしていた。



 土日は三浦さんとほとんど一緒にいて、憂鬱な気持ちなんて吹っ飛んでたのに、現実はあっという間にやってくるわけで。


 これで今日仕事に行かなかったら一生いけない気がする。


「頑張れ、真穂」


 鏡の中の自分にエールを送ってリビングに戻ると、完成した朝食をダイニングテーブルに並べている三浦さんが私に気づく。



「真穂、今日送り迎えするから」


「…え、三浦さん仕事は?」


「今日は休み」


「え、え!?聞いてないよ!?三浦さんが休みの日は私が朝食つくる約束なのに…」


「いいじゃん。今日は真穂に作りたい気分だったから」


 


 ……私が月曜日を憂鬱に感じてたのに気づいてたから、朝食も作ってくれたし休みもとってくれた気がするのは自惚れかな。



 私は三浦さんの過保護寸前の優しさで、ずぶずぶに甘やかされてるよ。



「こんなにしてもらって、三浦さんに貰った恩はどうやって返せばいいんだろう…」


 ダイニングテーブルの私の固定席に座りながら、思わず出た本音とため息。

 

 それをしっかり聞いてた三浦さんはお皿を置きながら、空いてる右手で私の顎をくいっと掴み、噛みつくように激しいキスをしてきた。


「え…?んっ…ん、ふぅ…」


 いきなりのディープキスに困惑しながらも必死に私も応えると、満足した様子で軽いリップ音を鳴らして三浦さんのキスが離れた。


「…っいきなりは反則だよ!」


「真穂がどうやって返せばいいんだろうって言うから、恩を返してもらっただけ」


「え、え、え!?」


「これでも足りないから、今日の夜も追加で返してもらおうかな」


 そう言って意地悪く笑う三浦さんの目は夜に見せる色と同じに見えて、まだ朝なのに今夜のことを想像して胸がときめいた。




 さっき運んだ食器で最後だったみたいで、何事もかったかのように私の前に座り、朝食を食べ始めた。


 私も続くように手を合わせて朝食を食べ始める。



「真穂の今日の仕事は何時頃終わる予定?」


「え、と、多分19時ぐらいには終わってると思う」


「その頃迎えに行く。もし早く終わりそうなら連絡入れてほしい」


「ん、わかった」



 憂鬱だった朝も、三浦さんがくれる言葉やキスや言動ひとつで吹っ飛んじゃう。

 

 この先辛いことがあっても、三浦さんとなら乗り越えて行ける自信がわたしにはあるよ。

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