第57話

いつもと違う感覚に違和感を感じて目を覚ますと、今日は三浦さんのベッドじゃなくて、リビングのソファーで寝ていた。


 かかっていたブランケットが落ちそうになったので目線を下に向けると、私のすぐ横でソファーに体を預けて座り寝をしている三浦さんがいた。


 近くのローテーブルには三浦さんが勉強中のお酒の本とノートやペンたちがそのままの状態で置かれていたので、いつのまにか寝落ちしてしまったみたい。


 私にかけられたブランケットを三浦さんにかけてあげて、本気で熟睡している三浦さんの寝顔を観察した。



「……やっぱり、寝顔もきれい」


 キスをするとき盗み見をする三浦さんとは違って、同じように目を閉じていてもより無防備で、少し幼く見える三浦さんが可愛かった。


 ハードな仕事をしていると思う。


 それなのに、三浦さんはいつも私を気にかけて大事に思ってくれて、仕事と両立しながら私をちゃんと見てくれる。


 いっぱい心配かけてごめんね。


 思えば最初の時に三浦さんの忠告を受けて琢磨さんと付き合わなければ、違う未来が待ってたかもしれないし。


 浮気されて傷つくこともなかったし、無断外泊して心配かけることもなかったかもしれない。


 ……けど、琢磨さんが私にくれたものもたくさんあって、琢磨さんとの楽しい時間だってちゃんと残ってるし、初めてが琢磨さんだったことを後悔はしてない。


 琢磨さんと幸せな時間も辛い時間も過ごせたから、三浦さんと過ごせる時間をもっと大事にしようって思えたよ。


 三浦さんしか知らない私で三浦さんと付き合ったら、貰える全てが当たり前のものだと勘違いしてたかもしれない。


 大事にされてることに気づかず、大事にされることが当たり前だと勘違いせず、今の三浦さんとの幸せな時間を過ごせているのは琢磨さんのおかげだから。



 全部が繋がって今の私と三浦さんになっているなら、私は琢磨さんとの恋も大切な思い出にできるよ。





 全部が終わったら、気持ちを伝えます。



 ――――三浦さんが、大好きです。









 無防備に眠る大好きな人が気づかないように、触れるだけのキスをした。

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