第51話

「……今日も美味しい」


「愛情入ってるから」


 本気にしそうな冗談を口にしながら私の前の席に戻って、三浦さんも途中だった昼食を一緒に食べる。



「三浦さん、……昨日仕事休んだの?」



 睡眠もしっかりとれて空腹も満たされ始めると記憶も上手に整理されていく。


 昨日のことで気になることがいくつかあって、三浦さんがいるうちに聞いておこうと思った。


「……元々真穂を迎えにいくつもりで休み貰ってた」


「それで昨日、会社にいたの?」


「……」


 気まずそうに言葉を詰まらす三浦さんに思わずきょとんとした顔で見つめてしまうと、観念した様子でため息ついて続きを話してくれた。



「真穂が無断外泊した日、何度も電話をかけても出てくれなくて諦めかけたときに、佐藤さんが代わりに出てくれて、真穂が佐藤さんちに泊まってるって話してくれたんだよ」


「……え!知らない!聞いてない!通話履歴もなかったよ!?」


「真穂にばれると逃げられると思ったから佐藤さんに協力してもらったの」


「え、えーーー……」


 知らない所でふたりが繋がっていたことがなんとなくショックだった。


「真穂が逃げないように捕まえてもらって迎えに行ったら会社にいないわ、探しに行ったら荷物がちらばってるわ、元カレに襲われてるわで、……不良娘に首輪でもつけとかないとだめかな」


「だだだ大丈夫です!もう無断外泊しいないし、三浦さんに相談するから必ず!!」


「……というわけでオーナーに頼んで昨日は休みもらったの。今日明日は仕事で家開けると、ふらふらと外出歩くなよ?」


「大丈夫だもん、不良少女って年でもないし……」


 本当に心配かけてたこと、仕事を休んで迎えにきてくれたことを知れてよかった。


 もう必要以上に心配も迷惑もかけたくない。


 昨日のことも含め、三浦さんがいなかったら……って考えるとすごく怖い。


 何回も三浦さんに救われて守られて今の私がある。


 だから、今の幸せも自分からも大切にできるようになりたい。


「月曜日に佐藤さんに会ったらお礼いっといて」


「うん、わかった」


 私も由香にお礼と大丈夫だったことを説明したいし、琢磨のこともこれで解決につながったと思う。


 あとは時間の流れに身を任せることにする。


 


「ごちそう様でした」


 先に食べ終わった三浦さんが片付けを終えてシャワーを浴びに行っている。


 私も食べた皿を片づけてそのままリビングでのんびり日差しを浴びていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る