第46話
私から三浦さんにキスをするのは初めてで、目を開けたまま驚く三浦さんの表情を見ながら、つま先立ちした足を地面に下ろした。
「帰りたくない」
「……俺の家だから?」
「違うよ。……このまま、三浦さんのところに帰れない」
由香が着せてくれた上着を脱いで傍にあるテーブルにかける。
破かれたトップスと琢磨さんにつけられたキスマークが下着の隙間から複数見える肌が露わになって、三浦さんの表情が歪む。
私はその表情にちくりと胸が痛むのを感じながら、自分で背中のホックをはずして上半身をまとうものを取り除く。
今度はスカートに手をかけると、口に入れられた下着は穿くことができず、私は一糸まとわぬ姿で三浦さんの前に立った。
「真穂…、何してんの」
「三浦さんに、抱いてほしい、今、この場で…」
私を射抜くように強い瞳で三浦さんが見つめる。
「こんな、汚い体で帰りたくない。三浦さんに上書きしてほしい、三浦さんの感触が、ほしい…っ」
三浦さんの前で服を着てない状態で立ち続けることが恥ずかしくなってきて、言葉にしたお願いは顔を見て言うことができなかった。
顔をそらした私は三浦さんがどんな顔をしているか確認することができない。
数秒の沈黙が私にはとてつもなく長く感じた。
―――バサッ
三浦さんの着ていたライダースをかけられ、顔をあげるとすぐに抱きしめられ三浦さんの腕の中に収まった。
「真穂の体は汚くないし、セックスだって本当は今すぐしたいけど、避妊できないからだめ」
「…ゴムがないからだめ?」
「だめでしょ」
「……嫌、今すぐ抱いてほしい。お願い…お願い…っ」
三浦さんの背中に腕を回して必死にすがりつく。
今すぐ抱いてほしい、じゃないとずっと嫌な記憶として今が残っちゃうよ…!
「――――っ」
私の両頬を包み込んで顔を覗きこむ三浦さんの顔は、切なくて苦しそうで、
「お願い三浦さん…っ」
涙があふれてきた瞳で訴えかけた。
三浦さんの顔が近づいてきて目を閉じると、消えた視界に三浦さんの声が聞こえた。
『―――覚悟、決めろよ』
うん。と返事をしたかったけど降ってきた何日かぶりのキスで言葉にできず、私は夢中で三浦さんが絡める舌に必死に応える。
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