第44話

―――――バンッ



 急に開けられた扉に、外からの光が少し入り込むことを背後に確認できて、私の思考は一瞬で止まる。


 琢磨さんの動きも止められ、後ろを確認しようと振り返ると、琢磨さんが私の前から消えていた。


 支えがなくなった私はそのまま床に倒れ込み、琢磨さんを蹴り飛ばした足の先を見た。


 あの琢磨さんを一瞬で蹴り飛ばしたのは、



「……三浦、さん……」



 三浦さんが一度だけ私に目線を向けると、離れた位置に倒れこんだ琢磨さんに向かって歩き出した。




「真穂……!!」


 

 由香の声がしたと思ったら、由香の着ていた上着に体を巻かれて抱きしめれらていた。


「由香……」


「うっ…真穂…っ真穂…!」


 私を抱きしめる由香の腕が震えていて、泣いてる由香が私を強く強く抱きしめた。


 やっと状況を受け入れることが出来た私は、こんな場面を見られたのは会社の人じゃないこと、由香が抱きしめてくれていること、三浦さんが助けてくれたことに安堵して。



 さっきまで流した涙とはちがう涙があふれた。


 視界の端に映った三浦さんはしゃがみ込み、床に倒れ込んだ琢磨さんの胸倉を掴んでいた。


 琢磨さんの口が切れている様子から殴られたこともわかる。


 三浦さんは殺気だっていて、琢磨さんを殺してしまうんじゃないかって怖くなった。


 私は由香に口の中のものを取り出してもらい、縛られた手をほどいてもらった。


 2人のおかげで冷静さを取り戻した今、由香に助けてもらう今が最高に恥ずかしい。


「……ごめんね由香」


「うんん、謝るのは私だよ!一人にしてごめんね」


「っ……!!」


 また由香と抱き合って、安心感を共有した。







 


 琢磨さんに話をしだした三浦さんの声が届く。



 


「お前さ、何やってんの?」




 本気で怒っているのが伝わるほど、冷たさをもった声に知らない三浦さんを見て、私まで怖くなった。



「てめえから手放したんだろ?お前の勝手なわがままで、真穂がどんだけ傷ついたのかわかってんの?」



 琢磨さんは殴られた恐怖からか、唇が震えて言葉が出て来ない。



「今も、自分が何やったのか理解できてねえだろ…?」



「い、いえ…」



「お前がヤッたことは人間のクズがやることだ。今後、どうするべきか分かってんだろ?」



「は、はい……」



「――――早く消えろ!!」



 怒鳴った三浦さんの迫力にビビった琢磨さんは後ずさりして離れた後、急いで立ちあがって扉に向かうけど動揺が隠せなかったのか、テーブルやいすにぶつかりながら会議室から出ていった。



 私が最後にみた琢磨さんは最高にかっこ悪かった。

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