第40話
階段を登りきった向こうで私と由香の様子を見ていたのは、寄り添うように琢磨さんの腕に手を回したさやかさんと隣に立つ琢磨さんだった。
――――びくっ
私が2人からの目線で反応したことに気付いた由香が視線の先に2人を見つけると、私だけに聞こえる声で囁いた。
「真穂、大丈夫だから」
私は由香の言葉は私を勇気づけるためのものだと分かっていたけど、確信を持って強く言い切った由香の言葉に背中を押された。
2人は私を見ていたことがなかったことのように2人の世界に戻って会社の中へ消えていった。
「外見だけ見たら美男美女の憧れのカップルだけど、中身は…」
「……そうだね」
由香の言葉に続きがあったけど聞こえなかったことにして、返事だけ返した。
『中身は…ヤリちんクズとヒステリックばばあ』
こんなことを由香が言ったって知ったら世の男性がびっくりしちゃうから、私の心にだけ留めておきます。
可愛い由香でいてください…!!
最悪だったのは朝だけで、出社後はお昼休みの買い出しとお手洗い以外は自分のデスクから離れなかった。
私の隣は元々由香だったから、常に由香と行動して、お手淡いも一人で行かないように気をつけた。
今日は天気がよかったから、気分転換に屋上でお昼も食べてることにした。
「うーん、美味しい!」
いつもはお弁当派の私と由香はふたりでコンビニに行って、サンドイッチにサラダにヨーグルトを買って帰って来た。
外で食べるとより美味しく感じる。
今日はだめかもと弱気だった朝から、思ったよりちゃんと仕事がこなせること、午後も問題なく過ごせる安心感で、今日来てよかったと思えた。
まだ今日の夜のことを考えてないけど、昼休みに繭ちゃんから返事が届いていたので甘えようかな。
『返事もらえてよかった!
いつでもいいよ、いつでも頼ってね。
今日RedMoonに行く予定だけど、真穂は来れる?』
三浦さんと顔を合わせるのは気まずいけど、金曜日なら忙しくて私の相手は出来ないだろうし、繭ちゃんに相談してそのまましばらくお世話になろうかな。
「天気もいいし、今日も無事に終わりそうで良かったね」
なんて、私と由香は油断していて。
私は昨日あんなことがあったのに、危機感が全然足りなくて。
三浦さんに相談しておけばよかったって、本気で後悔するんだ。
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