カクテル 5
苦いお酒は要りません。
第39話
朝起きると、違和感から飛び起きた。
辺りを見渡して、ここが三浦さんの家じゃなくて由香の家だと理解して、無性に会いたくなった。
私にベッドを貸してくれて、隣の床に布団を敷いて寝てくれてる由香を起こさないように移動して、スマホの画面を確認すると、ラインは相変わらずの琢磨さんと、繭ちゃんから。
三浦さんからは着信はあるけど、深夜0時を最後に着信はなくなっている。
繭ちゃんのラインを開くと、最初はどこにいる?と書かれたものだったけど、最後は、『落ち着いたら連絡してね』に変わっていた。
私はそのまま返事を打ち、送信した。
『繭ちゃん、心配かけてごめんね。
昨日は同僚のところに泊めてもらって、今日はそのまま一緒に出社するね。
ちょっと、色んなことがあって、……繭ちゃんに相談したいから、時間作ってくれたら嬉しいな』
送った後、琢磨さんのラインも一応確認したけど、いつも通りの『真穂、いつ会える?』『気軽に食事行こうよ』と表面的な連絡で、新垣さんのことは知らないみたい。
「……今日、会社いくのやだな…」
体育座りをしていた膝に顔を埋めた。
琢磨さんのことも新垣さんのことも、もう考えたくない。
顔を合わせるのも怖い。
自分だけで対処できる自信ない。
三浦さんに相談したいけど、逃げてきちゃって。
追われてるときは電話を平気で無視したのに、途切れた今は自分から電話をするのも、怖い…。
半強制的に由香に朝食を食べさせられ、スレンダーな由香の服は私は着れないので昨日と同じ服に袖を通し、泣いて腫れてると思った目は由香が寝ている間に置いてくれたタオルで腫れずに済み、いつも通りのメイクで出社できた。
由香と一緒に玄関を出ると、鍵を閉めた由香に続いて私も歩きだした。
ここまでしてもらって、やっぱ行かない!なんて言えるわけもなく、思い気持ちを引きずりながら会社に向かいます…。
「由香に何から何までお世話になって…本当由香イケメン!」
頬も少し腫れが残るだけで済んだのは由香のおかげ!
ご飯も由香のおかげで食べることできたし、睡眠もとれた。
私一人じゃ睡眠もとれずご飯も食べれず、部屋に引きこもってだめになってたと思う。
「全然、こんなの三浦さんなら余裕でしょ」
なんて、朝から由香は意地悪言う。
今の私には”三浦さん”のワードが一番大きいダメージ。
「今日はどうする?三浦さん心配してると思うけど、連絡した?」
「うんん、してない。今は寝てる時間だし、なんか、もう、会わせる顔ないし…」
「……ゆっくり考えればいいよ。焦らず。今日一日乗り切れば明日は休日だし」
「うん…」
今日の仕事が終わったら、荷物まとめて繭ちゃんのところに逃げようかな…なんてずるいことを考えてたら、会社の前の階段にたどり着いていた。
昨日、新垣さんにビンタをされたのもこの階段降りたところだったな…。
軽い気持ちで思い出しちゃっただけなのに頬が痛んで顔をあげた。
「―――――っ……」
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