飼い主さまのご連絡

第37話

三浦さんのことを話すのが一番辛そうだった真穂は、泣き疲れてそのまま落ちそうだったから、お風呂だけ頑張って入らせて、先にベッドで寝かせた。


 夜中に起きて食べてもいいようにおにぎりを握って冷蔵庫に準備し、洗いものと洗濯物を夜のうちに済まして真穂の隣にふとんを敷いて寝ようと準備してたら、真穂のスマホが着信を知らせた。


 画面に表示されてる名前は三浦さんだった。


「………どうしよう」


 勝手に出れないし…。


 躊躇していたら電話が切れたんだけど、すぐにまた着信がなって、真穂の様子から三浦さんに連絡してないことは読みとれた。


「ごめん」


 もうすでに夢の中にいる真穂に一言断りを入れてから、通話ボタンを押して電話に出た。


「真穂!?」


 出た瞬間に聞こえたのはイケメンを想像させる男性の声で、焦っているのが電話の向こうからも伝わる。


 きっと『今どこにいる!?』と続きそうな声を遮って話を始める。


「初めまして、真穂の同僚の佐藤です」


「っ……、佐藤、さん?」


 私の声に真穂じゃないと理解出来た三浦さんはすぐに冷静になり、落ち着いて私の話に対応してくれた。


「はい。真穂は私の家にいます。今日は泊まって、明日はそのまま一緒に出社します」


「……真穂は、今どうしてますか?」


「疲れて寝ちゃってます」


「……何があったか聞いてますか?」


「……はい」


「同僚が泣きながら走っていく真穂を見たと教えてくれて、すぐに連絡したんですが繋がらず……すぐに家に見に行ったら真穂は帰った様子もなくて…」


 だいぶ焦っていたのがよくわかって、真穂が大事にされていることを実感できて嬉しかった。


「ちょっと、色々あって…三浦さんにも相談しておきたいと思ってたんです。このまま電話を続けても大丈夫ですか?」


 まだ深夜0時を過ぎた頃、本当だったら勤務中なのに電話を続けて大丈夫か確認したんだけど、意図を理解した三浦さんは、


「はい、大丈夫です」


 と答えた。


 きっと真穂を探すために早退したんだね。


 この人は真穂のためにすぐ行動できる人。


「まずは、真穂の元彼のことなんですが…」


「……連絡、来てるんですか?」


 真穂の好きな人の前で元彼の話は気まずく感じて少し躊躇してしまったら、三浦さんの方から気付いてくれた。


「はい、真穂から…は聞いてないですよね?」


「なんとなく、真穂の様子がおかしかったから、その可能性を考えていて…」


「真穂は今日、三浦さんに相談するつもりでいました。すごく頻繁に連絡が来ているみたいで、三浦さんの前で口にするのはあれなんですが…、会って食事したいとか、そう言った感じの連絡を…」


 濁して話したつもりでいたんだけど、頭の回転が速い三浦さんには元彼の考えがすぐに理解できたみたいで、電話の向こうで反応が見えるわけじゃないのに背筋が凍った。


「……わかりました、注意します」


 今までの柔らかい感じのトーンから急に低くなったトーンに本気で怒っているのが私にも伝わって、私までびくびくしながら話を続けた。


「そ、それと…もっと大変なことが今日起きて…」

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