第31話

「男ってバカだから、別れた後も元カノは俺のこと好きって信じて疑わないんだよね」


「そんなことないけど」


 と口を揃えて言えるのは朔眞と和希がモテるからで、通常のクソ男はそういう考えを持ちがちなの。


「最近、和希の影響か真穂きれいになったでしょ?一緒に歩いてて振り向く男とかいるし、良い恋愛して綺麗になった元カノを取り戻したいと思うクズもいるかもしれない」


「…………」


「和希、注意しておいた方がいいんじゃない?」


「そうする。繭、ありがとな」


「うん。……和希は、まだ真穂に気持ち伝えないの?」


 グラスを磨く手を止めて考える様子を見せる。


「本当はいつでも気持ち言えるし、振られても手放すつもりはないけど、……真穂が今の関係を望んでいるなら、このままでいいかなって思ってた」


「………」


「だけど、こんなことになるなら、最初から言っとけばよかったな……」


 そう言った和希の表情を見て、恋をすると人は本当に変わることを実感した。


 和希とは高校から一緒で、昔の和希を知っているから真穂のことを好きになったと聞かされたときは開いた口を塞ぐことが出来なかった。


 思わずダメ!!と怒鳴りそうになったところを朔眞に止められて、和希が私の目を見てはっきり言った。



『絶対、大事にする。大切にする。傷つけない、約束する』



 今のところ、和希がその約束を破ったところは見ていない。


 これからも、その約束が破られることはないと思う。


 誰よりも真穂が大好きで大事にしている和希が、真穂を傷つけることなんて絶対無理だから。



 このまま2人の付き合いが順調に進めばいいと思っていたのに、今さらかき乱そうとしているものがあるなら、早くそれを取り除きたい。


 真穂、自分だけで抱え込まないで…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る