姫の閉ざした秘密
第30話
土日は忙しいのを分かっているから、なるべく平日の夜を選んで朔眞に会いに行ってるんだけど、最近は私の大事ないとこに手を出している和希の様子も確認している。
平日の木曜日は金曜日に比べてお客様が少ないため、私はこの日を選んでRedMoonに来店した。
扉を開けるとすぐに朔眞が気付いてくれて、あらかじめ連絡していたのでカウンター席の真ん中に通してもらった。
いつも通り私が一番最初に飲むカクテルを作ってくれる朔眞を眺めながら横を見ると、グラスを磨いていた和希が目に入った。
「真穂と仲良くやってる?」
「……”色々”とな」
「意味深な言い方やめてよー。この間だってなにかあったでしょ?」
真穂の様子から何があったか想像できるけど、日頃和希に敵わない私は意地悪心で聞いてみた。
すると顔色ひとつ変えずに反撃して来て、
「繭たちみたいに店で本番はしてねーから」
「は、はあああ!?」
タイミングよく出来たお酒を私の前に置く朔眞は冷や汗をかきそうなほど動揺した笑顔を保つので精一杯だった。
「もう、安易に和希に敵対心出さない…」
「その方が身のためだよ繭ちゃん…」
私と一緒にダメージを食らった朔眞さんがおつまみを取りにカウンターを離れた。
私は作りたてのお酒を口に含み、朔眞が私のために作ってくれたオリジナルカクテルを味わっていると、和希が重たそうに口を開いた。
「…あのさ、繭から見て、真穂に変わったことある?」
「……え、なんで?真穂の様子がおかしいの?」
「なんか、隠しごとしてるような、時々思いつめた様子があるんだけど、何に悩んでるのかわかんねーから聞けなくて…」
「和希、避妊してる?」
一瞬で殺気だった和希に殺すぞオーラで睨まれ、「うん、ごめん。そうだよね」、真穂を大事にしてる和希がへまするわけない。
「私も何も聞いてなくて…。私や和希に言えないことって、相当なことだと思うよ」
「だから余計に検討つかないんだよな…」
「意外と落とし穴があるかもよ。例えば、真穂ちゃんの元カレとか」
おつまみを取りにいった朔眞が戻ってきて、私たちの会話に入ってきたんだけど、それが爆弾並みの威力をもっていた。
「ねえ、その可能性すっごく嫌なんだけど、…しっくりきた」
「奇遇だな。俺もその可能性すっげー嫌だけど、しっくりきた」
「うん、うん、元カレ嫌いだからって俺に当たらないでね?」
私と和希の怒りの矛先はその発言を持ってきた朔真に向けられたんだけど、確かに、その落とし穴は可能性が高い。
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