第22話
「そんなにイライラするなら早く告っちゃえばいいのに」
「そんな簡単じゃないもん。まだ別れて数週間だし、もし私の勘違いで三浦さんとの関係が終わるぐらいなら、今のままで充分幸せだし…」
「踏み込めばもっと大きな幸せが待っていても?」
「今はこのままで充分」
そう言った私の顔は本心ではないのが顔に出ていたのか、「今日は私のおごり!飲も飲も」と勧められて、繭ちゃんと一緒にお酒を楽しんでる最中にやっと思いだした。
―――――繭ちゃんは酒豪です。
だいぶお酒が回ってきた私に対して、繭ちゃんは全然余裕の様子。
時間帯も遅くなり帰るお客様も増えてきたので、オーナーも三浦さんも私たちのところに来る余裕ができた。
カウンターにも空きスペースができたことで席を移動すると、心配そうな様子で私を覗き込む三浦さんの顔が見えた。
「だいぶ飲まされたな、繭に流されるとつぶされるぞ」
「ううん…だって繭ちゃんと飲めるの楽しくて…」
「…お前、もう俺以外に視線向けんな。あの時と同じ顔してる」
「へ?」
三浦さんの言ってることがすぐに分からなくて、ぽーっと三浦さんを見ていたら、横で話を聞いていたオーナーが「まじ?見せて見せて」と顔を近づけてきたけど、「オーナー」と呼んだらすぐに離れて繭ちゃんに抱きついてた。
私も今まで聞いたことないぐらい低い三浦さんの声にびっくりして、酔いが結構吹っ飛んだ。
そのおかげか、三浦さんがさっき言った意味を急に理解して、タイミングよく目線が合った三浦さんのせいで顔が赤面した。
「ちょ、ちょっとお手洗いにいってきます」
繭ちゃんたちに一言入れて奥の御手洗いに消えていく。
さっきまで三浦さんを独占していた美女は帰ったのに、もやもやが消えてくれなくて、目の前に三浦さんがいてくれてもなんだか苦しい。
「もう今日は帰ろうかな」
「真穂、帰んの?」
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