第21話
「繭ちゃんには私から話したかったのに…。というか、知られるの恥ずかしかったから嫌だった!」
だってだって、どこまで知っているか聞かなくても繭ちゃんの顔が楽しそうで恥ずかしい!!
両手で顔を隠してる間にお酒が届いて、「まずはかんぱーい」と上機嫌な繭ちゃんに夜が長い予感がした。
「まずはあいつ!”琢磨さん”だっけ?本当クズだったね」
お酒を飲めばつまみも弾むし恋バナも弾む。
数週間前の話なのに、もっと昔のことのように感じる”琢磨さん”を久しぶりに思いだした。
「繭ちゃんはいつ聞いてたの?この間あったときには知らなかった?」
最後に会ったのは2週間前、私が三浦さんと住み始めて2人の生活に慣れてきてる頃だった。
「実は知ってたんだけど、聞いていいか迷ってて…」
「そうだったんだ…」
「浮気した話を聞いた時はブチ切れそうになったんだけど、和希がまじでヤバかったって朔眞から聞いて。やっぱあいつのこと気に食わなったんだなーって冷静になった」
「そんなに嫌われてたんだね、琢磨さん」
「同じ匂いがしたんじゃない?」
「なんの?」
「和希、今は大人しく落ち着いてるけど、昔は今以上にモテたしチャラくはないけど女の子喰いまくるクズ野郎だったから」
繭ちゃんの話しが初耳だしびっくりしすぎて、ぽかーんと口を開けて固まった。
「今は全然そんなことないし、なんか、きっかけがあったのかもね」
意味心に私のことを見ていた繭ちゃんに気付かず、私は夜の三浦さんを思いだして色んなことを納得してしまった。
「今、一緒に住んでるんでしょ?どんな感じ?」
回想モードから戻されると、嬉しそうに笑う繭ちゃんが返事を待っていた。
「楽しい、よ。すごく」
「よかった!絶対和希の方がいいよ!大事にされてるでしょ?」
「……うん、大事にされてる。琢磨さんには悪いけど、…大事にされたって記憶がない。自分本位に愛されてたって思うのに、三浦さんは私のことを大切にしてしてるってすごく実感する」
「和希はずっと真穂を大事に思ってるよ」
そう言ってくれた繭ちゃんの笑顔は優しすぎた。
そのずっとはどこからどこまで含まれるんだろう。
私を大事に思う部分は、どこに所属されるんだろう。
「三浦さんと過ごしててすごく幸せだけど、錯覚しそうになる。自分と三浦さんの気持ちは同じなんじゃないかって…」
「真穂は違うと思うの?」
「……同じだったらいいな、とは思うけど」
「こういう事は本人の口から聞かなきゃ意味ないと思うけど、ちゃんと同じだと思うよ?だって和希、真穂以外には冷たいよ」
「そんなことないよ、皆に平等に優しいもん」
「”お客様”だからね。朔眞だってお客様には優しいよ。和希のプライベートで優しくされるのなんて真穂しかいないよ」
「繭ちゃんが言うと信憑性あるけど…」
私の目線の先にいるのはカウンターでお客様の相手をする三浦さん。
三浦さんの向かいにいるのは綺麗な谷間を惜しむことなく出した美人なお姉さん。
明らかに三浦さん目当て。
さりげなく三浦さんに触れようとしているのが私の角度からも見えるし、それを察っして私のイライラ最高潮。
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