優しいオオカミさん
第5話
『真穂って純粋で新鮮だよな』
初めて一緒にご飯を食べにいった居酒屋で、お酒を飲んでほろ酔い気味の琢磨さんが笑かけた顔にきゅんとした。
『そんなとことが可愛いんだよ』
全然琢磨さんのツボがわからないけど、抱き寄せて優しいキスをくれる琢磨さんに胸がときめいた。
『何か困ったら、自分で抱えず頼れよ。俺が近くにいんだろ』
残業中、ついに限界来てデスクで泣いていた私に気づいて抱き寄せて、頼れって言ってくれた琢磨さん。
『え、まじ?真穂初めてなの?…すっげー嬉しい、大事にする、痛くしないように気をつけるから…』
初めて琢磨さんの部屋でそういう行為をするときになって、耐えきれずにカミングアウトしたら、優しく優しく壊れものを大事に扱うように、大切に奪ってくれた。
こんなに夢の中の琢磨さんは優しくて幸せでいれるのに、なんで、現実は苦しくて辛いの?
琢磨さん…苦しいよ、なんで、浮気したの…?
「ん…っ」
目を刺激する光と頭を殴られているような痛みで目を覚ますと、私はいつの間にかベッドの上にいた。
だけど、周りの景色は見慣れないものばかりで私の部屋じゃないし、置かれているインテリアや配色から男の人の部屋に見える。
直に触れる冷気に身ぶるいして、腕を体に巻きつけて気付いた。
「……全裸、」
しかも、胸の周りには身に覚えのないキスマークがいくつも付けられていて、恐る恐る視線を下に向けると、散らばって床に落ちている私の洋服たちに混じる、男の人の服。
隣に眠る人を見つけて思考がついに止まった。
「きゃああああああ!」
私の叫び声に反応して目を覚ました相手は、バーテンダーの三浦さんだった。
三浦さんはまだ寝ぼけてる様子でうつ伏せの状態から体を起して頭を抑えながら私を見る。
その時にはだけたシーツから見えたのは、引き締まった筋肉質な胸元と、下半身に続くきれいなラインは私と同じ全裸だった。
「……なんで、どういうこと…?」
「なんでって、セックスしたから」
「え……」
三浦さんが気にすることなく発した言葉はとんでもない威力を持っていた。
何も覚えていないのに、私の蜜口が濡れた感触がした。
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