突然の出来事。
第2話
「……え?」
突然だった、お父さんの口から転校の話を聞いたのは。
いつも通り家族揃って食べる夕食の時間で、悲しい顔を隠しきれないお父さんが話し出した。
「実は、2週間前に移動の話が出てて、今日正式に決まったんだ」
お父さんはアパレル業界で働いていて、売れ行きが伸びない店舗を立て直す管理を担当している。
ここ最近転校の話がなかったから、このままここに住めると思ってた。
お父さんの仕事の都合で転勤は多かった。
お父さんのことは大好きだし、仕事についても幼いながら理解してた。
職場の人たちをお家に呼んで、頑張った会を開いたりしてお祝いしてた。
「香歩、いつも唐突でほんと、ごめんな」
「……うんん、大丈夫だよ。まだ中学2年だし、受験に差し支えないから」
わたしの言葉に、お父さんもお母さんも、喜んだ顔を見せてくれなかった。
「ものわかりのいい子にしてしまって、本当にごめん、香歩、わがままだって、何度も我慢してきたよね」
お父さんの優しい声に、思わず混みあがった涙が我慢できなかった。
「もう香歩も中学生だから、これから進路のことや、友達のこと、好きな人だって出来たと思う。お母さんとこここに残る選択もあるんだよ」
「……っ」
一瞬よぎったのは、結城くんの笑った顔だった。
せっかく出来た友達と離れるのは寂しい。
でも、それ以上に結城くんと離れるのが辛い、辛い、離れたくない。
「じぶんの気持ちに正直になっていいんだよ。親に気を使って、香歩が我慢する必要ないよ」
涙が次から次からこぼれて全然止まらない。
「うんん。一緒に行く」
泣いていても、わたしははっきりした声で答えた。
一緒に行く。
まだ、家族と離れたくない、お父さんと一緒にいたいよ。
残る選択が出来たから、今度は残ることを選ぶかもしれない。
だけど今回は、残る気持ちが家族に勝てなかった。
わたしが転校するまで、あと2週間だった。
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