第52話

「待ってて。戻ってきたら、結婚しよう」



  そう言い残して、尚人はアメリカ行きの飛行機に消えていった。




 残された私はすぐにその場を離れることができなくて、尚人の姿が見えなくなって切れた緊張感から、人目を気にせず泣いた。


 さっきまであった尚人の香りが消えていく。

 さっきまで私を抱きしめてくれた尚人の熱が消えていく。

 私の名前を呼んだ尚人の声を、実際に聞くのはずっと先の未来。


 一緒にいるのが当たり前ですぐ近く相手を感じられる、自分に甘い恋はもう卒業した。

 これからは、自分も相手も高め合う、お互いを大事にできる恋を大事にするんだ。




「いってらっしゃい……っ!!」



 だから、尚人がいなくて寂しいってなくのは、今日で終わりにするんだ。

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