第46話
「あの翔真だよ?しかも、ずっと後輩で大事にしてきた莉緒だよ?いくら追い込まれてって、そこまで理性が効かないおバカじゃないよ」
「……日菜子先輩、直球すぎて反応に困ります……」
「なんだか莉緒とは友達になれそうで。いいきっかけになってよかった」
「こんな大事をいいきっかけになってよかったなんて笑顔で締めないで……」
また落ち込みそうな莉緒に「今が最高にいい関係だと思ってるんだからいいのいいの!!」と笑いかけたら、莉緒も観念して「そうですね」と新しい関係を受け入れた。
「だから、莉緒を傷つけたことを後悔してると思うんだ。せっかく営業部に異動するんだから、話してみたらどうかな?」
「……話して余計に気まずくなったら辛いです……」
「話さず再会する方が、翔真の性格上めんどくさいというか、気まずいというか……」
と返事を返すと、莉緒も心当たりがあるのかずーんと沈黙を作っていた。様子を見ながらサンドイッチを食べてると、莉緒が顔をあげて、はっきりした意思で「話をしてみます」と伝えた。
「うん、きっと、今の私たちみたいに心地の良い素敵な関係が待ってると思う」
「……日菜子先輩は、どうするんですか?」
「翔真とは話がついてるから大丈夫…」
「そっちじゃなくて、部長です」
私の言葉を遮るように今度は莉緒がぶっこんできた。
「………」
思わず押し黙ってしまった私に、莉緒は今度は自分のターンだと話を進めていく。
「好き、なんですよね?部長のこと。2人は本当に何もなかったんですか?それとも、部長の奥様のことがあるから……」
本当は人の個人情報を他人に勝手に話すのは良くないし、部長の奥様の話はデリケートなことだから、私の口から伝えるのはできない、どう切り抜けようか考えていたら、莉緒が驚くことを口にした。
「奥様だって、部長がずっと一人身でいることを望んでいるとは思えません」
「へ?」
驚き過ぎて変な顔が出た。
私の反応が意外だったのか、話をしていた莉緒も勢いを失いきょとん顔になる。
「日菜子先輩、奥様が亡くなってること、知らないんですか…?」
莉緒の顔に”まさか!!”と驚きの単語が浮かんでいるが、私も周知の事実。私がびっくりしたのは、そのことを莉緒が知っていることだ。
「知ってる、けど、莉緒はどこから聞いたの?」
この質問にも莉緒は驚く回答をした。
「部長本人からです」
もう、開いた口がふさがらないってこういうことだと思う。
どういう事ですか?何がなんで…、え!?
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