歯車 six
海外転勤
第42話
部長との共同生活も終わり、翔真との同棲も解消され、わたしは1人暮らしを満喫しながら今まで以上に仕事に励んだ。
私は仕事が好きな自分を大事にすることにした。
翔真よりも優先したものだから、これから先も妥協せず追いかけ続けるつもりでいる。
部長とは元々何も始まってなかったし、部長は今までもこれからも愛妻家で、3カ月近く一緒にいても私が女として見られることは一度もなかった。
部長だって男性で、奥様が大好きでもそういった相手はもちろんいただろうし、現に使用された痕跡のあるものも寝室に隠してあったし。
だから、私じゃ部長に踏み込むことも、部下以上の特別になることは難しいことを悟った。
それは裏を返せば、仕事を頑張れば頑張るほど部長の特別になれるってことだと思うから、わたしはそれで充分幸せをえられる。
私の初めて担当した企画は部長のサポートもあったおかげで大成功して、その後も順調に担当を任され、先輩の補佐をしながら頑張る毎日だった。
「ただいまー……」
長年の癖が抜けない私は誰もいない1人暮らしの部屋でも、習慣を言いながらパンプスを脱いで部屋に上がる。
今日もくたくた!だけど明日は土曜日!休日!
こんな日はお風呂にゆっくり浸かってビールを飲みながらごろごろする!と決めてお風呂の支度をしているときに、何気なく見たカレンダーで今日が何日か見てしまった。
いつの間にか1年経っていたんだ…。
きっと今年も部長はいちごのケーキを買って帰って、1人で胸焼けと戦いながら食べるのかな。
甘党なのにチョコレートケーキじゃなきゃだめなんて、ちょっと難しい理解できない部分さえも可愛いと思う私は、未だに部長から抜け出せないダメなアラサ―。
部長はあの時の共同生活はなかったことになっているのか、ずっと変わらない態度で、1人立ちできた私は部長と一緒に仕事をすることはなくなって、新入社員の女子が部長にきゃーきゃーなっているのにきりきりしたり。
ほんと、叶わないのに。
私みたいに困っている人がいたら、部長は一緒に生活しちゃうかもしれない。
私みたいにされたら、皆勘違いして部長に告白してもおかしくない。
私の場合は恋愛対象外だったけど、もしかしたら他の人は……!!
なんて本人にしか分からないことを想像しても苦しくなるだけだからもうやめにする。
翔真のときはこんな醜い感情なんて知らなかった。
わたしはつくづく翔真に愛されてたんだなってここでも実感する。
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