第41話
2人で過ごしたマンションを後にすると、雨の中ずっと止まっている車に気付いた。
「部長……」
部長の車だ。
私はそこに向かっていいのかわからず立ち止まっていると、運転席から私に気付いた部長が視線を合わせる。
私は部長の真剣な瞳に見つめられて、色んな思いが急に込み上がってきた。
私も、前に進まないといけない。
そう決めて部長の助手席に乗りこんだ。
「………話、できたか?」
ゆっくりと車を走らせる部長の言葉に、私は静かにうなづいて「すぐに住む場所を探します。色々お世話になりました」と、部長の傍から離れることを伝えた。
部長は「そうか」と答えただけで、それ以上何か言うことはなかった。
このままずっと雨が続けばいいのに。
そしたら、この憂鬱な気持ちを雨のせいにできるし、泣いてる顔を見られる心配もない。
離れるんだ、ここを。
居心地のいいここに甘えるのはもう終わり。
翔真は最後まで私を守って背中を押してくれたから、私も前に進まなきゃいけない。
逃げ出したシンデレラは
王子様の元には帰らなかった。
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