第38話
仕事の終わりが見えてきた今日、私は翔真に話し合いたいとラインを送った。
ラインはすぐに既読にならなくて、後で確認しようとスマホを戻して会議室を出ようとしたら、スマホの振動が翔真からの返信を教えてくれた。
返事は簡潔で、「わかった。今度の休みに家で待ってる」と書かれた返事だけだった。
私と翔真はこの先、どんな未来を選ぶんだろう……。
部長に心配をかけるから言わずに行こうかとも考えたけど、何も言わずに翔真のところに行った方が心配すると思ったから、「今度の休みに翔真と話をしに帰ります」と伝えたら、少し間が空いたけど、「頑張れよ」と背中を押してくれた。
部長はその後もメガネをかけてリビングに持ち込んだ仕事を続けていた。
「おやすみなさい」と声をかけて、私は先に寝かせてもらうことにした。
どんな結末になるかわからないけど、きっとこの生活ももうすぐ終わって、私と部長は今まで通り、何も変わることない部下と上司のまま。
今だって何かあるわけでも変わったものなんてない。
部長にとって私は少しだけ特別な部下で、それ以上でも以下でもない。
私のわがままで簡単に超えていい一線なんて存在しないから。
次の休みも何の運命か、私が翔真と初めてすれ違った夜と同じように大粒の雨が降る日で、翔真と住むマンションの近くまで送ってくれた部長にお礼を言って、住み慣れた部屋に足を進めた。
遠くで部長の声が聞こえた気がしたけど、雨音だったかもしれない。
「行くな…って、俺にいう資格なんてねえよ、」
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