第30話

目の前にいるのが日菜子じゃないことは分かっていた。



香る香水だって、耳に届く喘ぎ声も、


俺の手に反応する体も、


俺を締めつける熱も、


全部違うことを分かっていて、


俺は止めることができなかった。




苦しくて、苦しくて、


俺は都合のいい現実に逃げた。



莉緒の気持ちなんてこれっぽっちもわかってなかった。


俺の下でどんな顔をしていたのか、


俺には見えてなかったんだ。









歯車の終わりが俺には分からない

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