第23話

部長の車で流れる音楽はおしゃれな洋楽のバンド?でドライブの気分を高めてくれた。

 

「ドライブどこ行きます?」


「二宮は行きたいとこある?」


「うーん、安定の”海”がいいです!!」


「りょーかい。今の時期ならちょうどいい頃だろ」


 春と梅雨の中間、晴れた今日の海はきっと澄んでいて過ごしやすい気候だろうな。

 窓から入る空気も気持ち良くて、運転まで完璧な部長のドライブは本当に快適だった。

 車自体高級だから揺れも少ないし、仕事もできる上に車の運転まで上手な部長に欠点なんてないんだろうなって改めて実感した。


「部長と奥様ってどんな出会いだったんですか?」


 せっかくの気持ちい空間で潮風を感じるドライブ、部長と色んな話をしてみたいと思った。


「二宮と田中と一緒。俺と郁美と陸斗が幼なじみだったんだ」


「え…本当ですか!?幼なじみだったんですか!?」


 会社では北川と呼んでいる部長が敢えて下の名前で2人を呼んだのは、この空間がプライベートなものだと部長も考えてくれたから。


「北川さんと郁美さんを取りあうことはなかったんですか?」


「………二宮の幼なじみは田中だけ?」


「うーん、腐れ縁の友達は結構いるけど、幼なじみは翔真だけですね。って、話しそらさないでください!」


「いや、やっぱ男2人に女1人の幼なじみだとそういうこと考える奴多いんだな~って思って」


「それは、やっぱり憧れのシチュエーションじゃないですか!女子はそういうの結構好きなんです!しかも部長も北川さんも超絶イケメンだし…」


「全くなかったよ、取り合い。そもそも陸斗が郁美を恋愛対象をしてみてなかったから」


「え!なんでですか?部長に遠慮して…とか?」


 ぐいぐい聞きこむ私にすっと目線を向けた部長の視線の席がなんとなく顔より下にあったような気がするけど、気にせず答えを待つと、部長は意地悪な声で続けた。


「郁美にすっげー失礼な話なんだけど、陸斗のタイプじゃなかったんだよ、郁美が。」


「…へ?そうなんですか?」


「陸斗の好みってまさに二宮みたいなタイプなんだよ。ちょっと童顔で可愛い系なのに巨乳で小さいってのが」


「え…え!え!?え!!さっき見てたのってやっぱり顔じゃなくてここですか!?」


 思わず両手で胸元を抑えた私に部長は吹き出し、声を出してゲラゲラ笑った。そんな姿を見るのは初めてで、私はそれ以上何もいえずに部長を睨むだけで終わってしまった。


「陸斗さんの好みはよく分かりましたが、部長の好みに郁美さんがストライクだったってことですね」


「そうそう。胸も小さくて身長も高くて女ッ気もなくて黒髪で髪も伸ばしてボブまでが限界っていう、不器用なのに可愛いあいつがストライクだった」


「………素敵な人ですね。会ってみたいな」


 今まで楽しそうに会話をしていた部長が初めて息を詰まらせ悲しい顔を見せた。この表情、前にも見たことがある…。


 あの時と一緒、郁美さんのお誕生日の時の―――


 私が言葉に悩んでいる間に浜辺に車を停車させていた部長と一緒に海へ降りて少し歩くことにした。

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