歯車 four
逃げ出したシンデレラ
第21話
ベッドまで移動した翔真と痛みが麻痺するまで、翔真が満足するまで何度も何度も体を開かれて、いつのまにか気を失うように意識を手放していた。
目が覚めた時にはカーテンの隙間から日差しを感じた朝で、すぐ隣にいつもの顔で寝ている無防備な翔真がいて、心の底からほっとした。
ちょうど今日は土曜日で出社の心配はいらないし、部長と莉緒と顔を合わせる心配もない。
動かしだすとみしみし痛みの悲鳴をあげる全身に「ごめんね」と声をかけて起き上がると、リビングからベッドにかけて乱暴に脱がされ、引き裂かれた下着や洋服が散乱していて、昨日の事を思い出してお腹が痛み出した。
行為後の痛みとは違った腹部の違和感がだんだん強くなり急な激痛に変わった瞬間、近くにあった翔真のTシャツを急いで着て、トイレに駆け込んだ。
あまりの痛みにお腹を抱えて前のめりになると、ツーっと股を伝う冷たい感覚に背筋が凍る。
おそるおそる冷たい感覚に目を向けると、………見慣れたあいつだった。
そういえば明日が生理予定日だった。
そしてこの激痛もいつもやってくる1日目の生理痛。
私は1日目から3日までが痛みと出血のピークだから、今日から辛い日が始まってしまった。
とりあえず、絶対ではないけど妊娠の可能性がなくなったことにほっとして、今月も無事にきてくれた生理に感謝して、鮮血で汚さないようにリビングまで戻り、着替えを持ってシャワーに逃げ込んだ。
熱いシャワーが痛みを刺激するけど、とにかく冷え込んだ体を温めてあげたかった。
シャワーの熱気で徐々に温まりだした浴室で体を綺麗に洗っていく。
前に翔真がつけたキスマークは気づかないうちに消えていて、翔真と私が最後にどんなスキンシップをとったかも思いだせずにた。
部長との会話や部長の顔はすぐに浮かぶのに、私は最近の翔真との会話も顔も思い出せない、そこまですれ違ってしまっていたことをやっと自覚した。
昨日の翔真の怒りの引き金になったのは”パンプス”なのは確実だと思うけど、それだけで翔真があんなに怒ることはあり得ない。
私はもう、翔真が何に傷ついて何に怒っていたのか分かることが出来ないほど翔真に距離を置いてしまっていた。
その代償が全部、降りかかってきたんだ。
翔真はいつから見ていたんだろ。
なんで莉緒と2人でいたんだろ。
翔真は…私が履かせてもらったことが引き金になったの?
それとも、ブラックを選んだことが…翔真を傷つけたの…?
体をリセットして綺麗にすることはできても、頭の中をリセットして綺麗にすることができない。
私と翔真にあった小さな溝が、気づいた時には大きな崖になっていたんだ。
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