第16話
帰りのエレベーターで感じた翔真の”違和感”が消えたのに、いつもの翔真とどこか違う違和感を肌で感じるのに、その違和感の原因が今の私にはわからなかった。
食事中の会話もいつも通りで楽しい時間だったのに、翔真の目が私を映していないように見えて、私の目にも翔真が映っていないような気がした。
私の分の食器も下げてそのまま洗い物を担当してくれた翔真の後ろ姿を見つめていたら、さっき感じた違和感と一緒に寂しさがぶわーっとこみ上げてきて、
―――ドンッ……
勢いよく翔真の鍛え上げられた背中に抱きつき、腰に腕を巻き付けた。
翔真の体はびくともしなかったけど、洗い物をする手をとめて私に優しく聞いてくれた。
「日菜、なんかあった?大丈夫か?」
頭上から聞こえる翔真の声が優しすぎて、なんだか泣きたい気持ちになった。
頭をフルフル振って「大丈夫」と答えることしか出来なかった。
慣れた手つきで洗い物をする翔真に甘えん坊になってしまった私は抱きついたままだったんだけど、そろそろ片付けが終わるって頃に翔真が急にこっちを向いて真剣な顔を見せて聞いてきた。
「日菜子、欲求不満?」
「…………はああああ!?」
10秒ぐらい間が空いて変な声がでてしまったが、翔真はいたって真剣をキープしようとして半笑いになっているイケメンフェイスでこっちを見ていた。
「だって、すげーおっぱい当たってるから。日菜子は身長小さいくせにおっぱい大きいもんな」
「な!これは翔真のせいでもあるんだから!!翔真と付き合って2カップ上がったの知ってるでしょ!!」
「そうだったね~。てっきり誘われてると思ってやる気になってるのに、日菜子はその気じゃないの?」
可愛く首をかしげながら私の右手を翔真のアソコに持って行くと私からまた悲鳴が上がり、翔真は「あとでな~」と楽しそうに笑ってお風呂に行ってしまった。
結局、翔真に話すタイミングを作ることができなかった。
小さなオレンジ色の光が残る部屋に充満するお互いのシャンプーの匂いに頭がクラクラしそうになる。
翔真のせいで大きくされた胸も翔真の手で自由に遊ばれ喜んで快楽を受け入れるようになってしまい、もっともっとと翔真を欲しがり奥へと誘いだす。
きっと私は身も心も翔真という海に溺れて死んでいくんだ。
渇きを潤すようにキスを交わしても零れる私の声が、なんだか別人のようで恥ずかしい…。
光の中で微かに見える翔真の表情が、いつもより切なげに見えて、私の奥がさらに翔真を締めつけたのが分かった。
そして、翔真が与える強い刺激に耐えきれず意識を手放す瞬間に翔真が吐き出した言葉を、私は拾いあげることができなかった。
「……っなんで……!」
日菜子は俺だけのものにならねえの…
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