第15話
全部の工程が終わって髪をまとめ上げたら再びお風呂で全身浴。女の子はお風呂も大事な美容タイムでほっとするまでも忙しいものですよね。
翔真が入浴剤を嫌がらないでくれるので、優しさに甘えて自分好みの入浴剤をいつも入れさせてもらっていて、乳白色の染まった湯船にしっかり浸かりながら今日の出来事を思い出していた。
今日は色んなことがあり過ぎて頭の中を整理したかった。
まず一つ目は仕事を任されたこと。
今日はこの事を翔真にきちんと話さないといけないし、言えないでいた溝を埋めることも、できればしたいと思うんだけど…。
もう一つは部長の奥様のこと、初めて色々聞いてしまった。
速見部長と北川さんの仲の良さも噂以上だったし、あとは…。
初めて莉緒の気持ちを聞いたのと、莉緒と翔真の関係も少し気になってしまった…。
仲がいいのかなと思っていたし、なんとなくの莉緒の好意も気づいていたし、鈍感な翔真は気づいていないから知らないフリをしていたけど、翔真が莉緒に話していた本音が胸にひっかかり痛かった。
気にしても仕方ないし、わたしが望んで選択してきた道だけど、翔真は他の部署との飲み会平気で行くの?って傷ついた自分がまた顔を出してしまったので、ごめんねってまた隠れてもらった。そんなことで、傷つかなくていいの。
その何倍も翔真を傷つけるぐらいなら、私は行かない。
お風呂からあがって全身のスキンケアと髪の毛のケアやマッサージなどの美容タイムを終えた頃、テーブルに夕飯をセッティングし終えた翔真が私を呼んでくれた。
「わー!美味しそう!翔真ありがとう!!」
テーブルの上には色鮮やかな瑞々しいサラダに特製カレーとスープのデザートのプリン!!最高です!
いただきまーすと手を合わせて食べ始める。
その頃には違和感を感じていた翔真の怒りも収まっていたのか落ち着いているように見えたので様子を見ることにした。
翔真は大学時代から1人暮らしを始めたこともあり、料理の腕も家事能力も高い。唯一の弱点は朝が弱いことだけだと思う。
今日の夕食もどれもが美味しくて「んー!美味しい!」と笑顔が自然とこぼれて止まらない。
「翔真は今日は社食にした?」
「……うん、新メニュー食べたかったし内勤だったから」
少しだけ気になる不自然な間があった気がしたけど、私は深く気に留めることができず、その間の中に翔真の悩みを紐解く鍵があるなんて気づかかった。
こうやって少しずつ小さな溝が歪みを作って私と翔真の歯車を狂わせいくことにさえ、この時になっても気づくことが出来ず、ただ目の前に流れる暗黙の空気を読んでいた。
幼なじみで遡れば幼稚園からの仲で、親密になってからも15年近く、彼氏彼女になってからも7年、お互いのことを分かっている、言わなくても分かるなんて、傷つく覚悟も傷つける覚悟もなかった私たちには、歯車を止める権利さえ持たせてもらえなかった。
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