第67話
「…弱かった悠真が悪い、ひなはなんも悪くない。だから、あんな傷ついたのにじぶん責めんなよ」
「っ……」
「悠真はまだまだガキだから、ひなの側には戻らせない。同じこと繰り返されたら、俺は耐えられない。そんな二人は2度とみたくない」
「隼人…」
苦笑を浮かべる隼人の指は、優しく目尻をなぞって離れた。
「俺はさ、ひなが幸せなら悠真じゃなくてもいいんだ。悠真が幸せなら、ひなじゃなくてもいいんだ。二人が大好きだけど、二人だから好きなんじゃない。ひなたちが幸せなら、俺はそれでいい」
「わたしも…隼人が大好きだよ。ありがとう。勝手に連絡途絶えさせてごめんね」
「ほんとだよ。大事なのは悠真だけじゃねえし」
「うん…うん、ありがとう」
今度は嬉しい涙がこぼれだした。
苦しい時期もあって、今日までたくさん泣いてきた。
何度も後悔したり、悩んだり、振り返ることもあったけど、少しずつ足掻きながら前に進んで。
今日を迎えた。
やっと、じぶんが進んだ道の、選んだ道の答えを知ることができた。
悠真を好きになってよかった。
たくさん愛されて、とても幸せだった。
隼人に出会えた。
悠真と同じぐらい、わたしのことも大事に思ってくれてる。
店長を好きになってよかった。
人を好きになるって頭じゃなくて心が勝手に動くんだって身をもって知った。
幸せだった。
店長の温もりを知って、触れる手から、向けられる目線から、聞こえる声から、わたしを好きだって伝わった。
恵里さんを裏切っても、この幸せを手にしたことを後悔しない。
傷つけても、この人が欲しいと思うぐらい好きだったんだ。
わたしが選んだ道が正しいか認めてあげられるのはわたしだけだから、わたしは胸はっていえるよ。
わたしの選択は間違ってなかった。
だって、今、こんなに幸せだから。
悠真と恋をして、店長と恋をして、幸せだったから。
「今度は悠真の番だな。あいつまだガキだし、時間がかかるだろうけど、ひなと出会えたことはあいつの宝だよ」
「わたしも、悠真と隼人と出会えたことは宝だよ」
「……辛くなったら距離おいてもいいからさ、俺との縁は切らないでくれるか」
「もちろん!これからもよろしくね」
隼人の前に出した右手を、隼人の右手がゆっくり繋いでくれた。
そこに、多分ずっと鳴りっぱなしだったスマホを取り出して、観念した顔で隼人が電話に出た。
「もしもし?……ああ、いたよ…うん、うん…ああハイハイ。…だからな~…お前のそういうところがまだガキだっていってんだよ!ちょっとは待ってろ!!」
隼人の話す感じから電話の相手が悠真とわかって、二人の電話のやり取りが見えるようで思わず笑ってしまった。
わたしも悠真も、じぶんのペースで少しずつでも前に進んでいこうね。
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