第66話
店長と恵里さんも、どっちも悪くない。
これは運命で、どちらのせいでもなくて、二人の間にはちゃんと愛があったよ。
お互いがお互いをほんとに好きで、不安で自信がなくて信じることができなかったんだ。
それほど好きだったんだ。
それほどお互いを好きだったんだ。
店長とわたしの間にも、ちゃんと愛があった、よね?
わたしの体が、店長に愛された時間をしっかりと覚えてる。
彼女になれなかったけど、確かに店長は、わたしを愛してくれた。
もしかしたら、わたしを放すために彼女にしなかったのかもしれない。
恵里さんのことをわかってて、わたしが選ぶ道もわかってて、わたしが苦しむことが増えないように、少しずつ予防線を張ってたのかな。
どれも、確かめることができなかった。
店長に聞くことができなかったし、店長が思うことに答えることもできなかった。
やっぱり、今も辛いけど、隼人と話して重たいものが消えていった。
わたしが見つけたかった答えを見つけることができた。
もう、大丈夫。
もう、大丈夫だ。
「隼人のおかげで、気持ちの整理ができたよ」
「よかった。悠真も運命だったと受け入れて前を向くか、後悔を受け入れて前に進むしかないんだけどな」
「……悠真は、なんで浮気したか、隼人は知ってる?」
「…一応、知ってるけど、…悠真が悪いよ、結局は」
「聞いても、いい…?」
「……あいつたまに発作みたいにおかしくなることあるだろ?すげーひなに依存してて連絡とれないだけでやばいとき」
「え…、そんなときあったの?」
「やべっ、これ知らない話だっか…。俺も悠真も健全な男子高校生じゃん?好きな女の前じゃかっこつけたいお年頃なんですよ。まだガキだけど」
「かっこいいと思うよ」
「照れるわ。……で、ひなたに一切連絡がとれない日があって、悠真がかけても出ないし俺からの電話も応答ないし、ラインも既読にならないしで、あいつ家まで押し掛けたんだよ。だけど、ひないなくて…」
「……あ!もしかして、友達の家で飲み会してそのまんま潰れちゃった日かな!?」
「たぶんそんなだろうなーと思ってたんだけど、発作みたいに不安になってる悠真にそんな声届かなくて、ひながいない、ひなに捨てられたって、…ばかだろ?ひなのこと信じられなかった悠真が悪い。あんなことで不安にになる悠真が悪い、だから、責めんなよ…」
言いながら隼人の手がわたしの目元に延びてきて、目からこぼれた涙をぬぐっていた。
隼人の苦しそうな顔と目の下に触れる長い指で、じぶんが泣いていることに気づいた。
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