1月

思い出の悠真

第55話

新しいバイトを始めた頃は秋だったのに、いつのまにか冬がきてクリスマスが終わってお正月を迎えて、現在、秋人と秋人の彼女と店長の4人で三が日がとっくにさった初詣にきている。



わたしは年末年始お休みもらって課題や友だちとの忘年会に参加してたんだけど、秋人と店長は休む暇がないくらい大変だったらしい。


三が日中に初詣が出来なかったと嘆く秋人を可哀想に思い誘ったら、余分な人がくっついてきた。


沙良ちゃんのことではない、この人のことだ。


わたしが未だ別れ話を出来ずにいる店長のこと。


そもそも店長とわたしは彼氏彼女でもないし、セフレ?のくくりはとうに越していると思うのだけど、別れ話ってどう切り出していいかわからず、年末年始の長期休暇をいいことに連絡を取らずにいたんだ。


それを能天気な秋人によって崩された。


店長は最初に見たわたしの表情で全てを読み取ったのだろう。


新年の挨拶を済ませてからわたしに話しかけることはなく、時折触れる手が繋がれることはない。


もう、この手のぬくもりを感じることはないんだ。










恵里さんにはあの日、思いのたけを話してきた。


今まで苦しめていたこと、恵里さんの気持ちを知っているはずでちゃんと見ていなかったこと、たくさん謝った。


恵里さんは私を責めなかったけど、じぶんのことをたくさん責めた、コウの傍にいてほしいと頭を下げる恵里さんに、わたしは何度も首を横にふった。



もう傍にはいれません、店長の傍にいるべきなのは恵里さんです、それを今日本当に実感しました。


わたしはそれを望んでいたんです。


店長の傍に恵里さんが戻ることを。


矛盾してるけど、それを望んでいたんだ。


だから、お別れの準備ができる。


これ以上辛い恋にしたくなくて、店長と過ごした時間を幸せな恋だったと振り返れるように終わりにしたい。


『店長とさよならをします。すぐにはできなくて……少し時間かかるけど、今の関係は終わります。えと、時間がかかるってのは私が今バイトで入っているとかそっちの事情もあって…』


『……本気なの?ひな、』


『店長もどこかで分かっていると思います。店長と最後まで一緒にいるのは私じゃないって。今の店長なら大丈夫だと思いますよ』


『………』


『――――2月を目途にバイトもやめます。恵里さん、店長を離さないでね』

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