第54話
大粒の涙を見せないように顔を覆った恵里さんから
ごめん…
ごめんね…
ひな、ごめんね…
苦しそうに泣く声が聞こえてくる、
違うよ恵里さん、
恵里さんは悪くないよ、
謝らないといけないのは私だよ、
もうお別れです、店長。
終わりのカウントダウンが始まりました。
恵里さんを苦しめました。
わたしは苦しむ恵里さんを見ていたのに、
店長を手放すことができなかったのです。
恵里さんは、私が苦しくならないように、
自分から店長を手放そうとしました。
私よりも長い間店長を見てきた恵里さんが、
辛い過去を乗り越えた恵里さんが、
わたしに店長を譲ろうとしたんです。
堂々と店長の近くに行けるように、
今日、店長とさよならしようとしたんです。
目の前で泣く恵里さんを見て、
傷ついた恵里さんを目の当たりにして、
胸が張り避けたよ、
分かっているつもりだった、
見えているつもりだった、
本当は、なんにもわかっていなかった、
見えていなかった。
幸せな恋にするために、
さよならの準備を始めます。
―――――店長、幸せでした。
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