溺れる愛だった。【完結】

第41話

ひなたが秋人のことを呼び捨てにしてることは知ってたけど、秋人もひなたのことを名前で呼んでたんだな。

「お前、実蔵のこと下の名前で呼んでんだな」

「プライベートでも親交あるんで、よく店長と３人でご飯に行くし」

「へーー…」

俺も仕事中ひなたのこと、ちゃん付けで呼んでんだよなー…まさかそれも気にくわないとか??

いつ入り込んだか知んないけど、他の男に目をつけられるようなとこなくなんねえかなー……

ひなたの前では大人ぶってるけど、俺も独占欲強いんだぜ？

ぜってぇ今日優しくできねぇーじゃん。

蔵永たちが話しに夢中になっている隙に、先に帰宅したひなたにラインでメッセージを送った。

合鍵を渡しているから帰宅したら中で待っているはず。

ひたなのライン画面が既読になったのを確認して視線を蔵永たちに戻した。

これだけ分かりやすくなった蔵永の好意に気づかないってどんだけ鈍感なの？

じぶんにあんま興味ねえのかな？

ひなたがこんな調子じゃ元彼も落ち着いていられなかったよな……。

ひなたから正式に別れたと聞いたのは11月がもうじき終わる頃だった。

本当は俺と関係を持った日に別れたらしいけど、すぐに整理が出来ずに言えなかったらしい。

正直に隠さず話してくれるのも嬉しいけど、こういうときは結構ぐさっとくる。

ひなたは俺のことを大人だと思っているけども、中身は結構こどもだし焼きもち妬くし独占欲だって実は強い方だ。

こういう恋愛の勘は女の方がいいと思うけど、俺も人より勘が良いもんで蔵永の気持ちには最初から気づいていた。

現にめぐと恵里は俺とひなたの関係の変化に気づいているみたいだし、恵里からの連絡頻度も多くなってきている。

めぐの場合は俺の女癖の悪さはどうでもよくて、巻き込まれない限りは知らんぷり。

だけど厄介なのがめぐの彼氏だ。

西野にばれると変に面白がってひなたの立場を悪くしたり、恵里に嘘の情報を流す可能性が高い。

しかも、最近あいつの絡み方が悪質になっている。

西野は口が達者で周りにちやほやされたいタイプだ。

そこで自分に懐かないひなたに対してやっけに絡んでいるのが目につく。

ひなたの性格からして特定の奴に懐くとかあり得ねえのに、バイトの子に変な絡み方するのはまじでやめてほしい。

恵里がなにかと用事をつけては頻繁に呼びだしてるみたいだから、これ以上ひなたにストレスを与えたくない。

ーーー恵里は確実に気づいている。

俺らが誤魔化していることも、ひなたがまだ恵里の心理に気づいていないことも。

じぶんへの好意に鈍感なのも困るけど、じぶんへの悪意や敵意にまで鈍感なのはもっと困るよほんと。

純粋なひなたが今のままでいれるように、俺が願うことはそれだけだよ。