12月

広がる雫、絡まる糸、動き出す恋。

第40話

悠真と別れてから、わたしと店長の関係はどんどん深いものへと変わっていき、これまで悠真しか知らなかったわたしの体は、どんどん店長の癖を覚えていった。




わたしと店長の仲を疑う人もいたけど、店長の中に根強くある恵里さんのことを皆もわかっていて、深く追及することなく、わたしも悠真のことがあるので恋愛はこりごりという予防線のままでいた。



今日はわたしがめぐさんの代わりにラストまで残る日で、掃除も片付けも終わり、着替えてみんなと雑談している最中だった。


突然蔵永さんから連絡先を聞かれた。



「へ?」


「…なにびっくりしてんだよ、お前が聞きたいっていったんだろ?」


「そうだけど…忘れてたから唐突だなってびっくりして…」


蔵永くんはさほど気にした様子はないけど、周りの人間固まってること気づいてる?


店長なんてびっくりして煙草落としちゃったよ。


ラインのふるふる機能を使って連絡先を交換して、わたしは店長からの視線が痛すぎるため先に帰ることにした。


「お先に失礼しまーす」


「お前明日休みか?」


蔵永くんが声をかけた。


「休み、…だと思います」


「ふーん…おつかれ」


「?…お疲れさまでーす」


店長がなにかいいたげにその様子を見てたけど、その場で聞くような神経をわたしは持っていない。


正直、最近恵里さんと頻繁に会う状況にも精神的に疲労が来ていた。


早く帰って寝ようかな。


そう思って車に乗り込むと、スマホが新着通知を知らせていた。


ロックを解除すると店長からのライン、部屋で待ってて、とのこと。


店長も明日休みだからお泊まりコースかな。


帰る予定だった気持ちを切り替えて店長のマンションへと向かった。




side店長



最近蔵永の視線が分かりやすい敵視に変わってきてる。


本人にまだ自覚はないけど、先に周りが気づくかもしれないな。


しかも、あれだけ人の気持ちに敏感なひなたが自分への好意に鈍感ってどうなんだよ、ったく。


だから最初に言ったのに。


無意識のうちにイライラが出ていたのか吸ってる煙草の減りが早かった。


「蔵永さんってまだひなたさんと連絡先交換してなかったんですね」


こいつは本気で空気を読んでないのか確認したくなるほど、能天気な秋人の質問にいらっとした。

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