第33話

「知らないうちに悠真から色んな影響受けてたよね」


「連絡無精がスマホを持ち歩くようになったとか?」


「Twitterを始めたし、悠真の好きな曲を聴くと会いたくなった」


「俺だってひなたの好きなバンド好きになって今も聴いてるよ」


「悠真の好きな本捨てられなくて、今も本棚にあるよ?持って帰る?」


「嫌じゃなかったら置いててほしいな、思い出として、」


「思い出して辛くなったら捨てるかも、それまでは残しておくね」


「……ひなた、そいつのとこに行くのか?」


急に本題に入り込んだ悠真に一瞬びくっと体が跳ねたけど、悠真の方に顔を向けてしっかり頷いた。


「……行くよ。好きなの、あの人が。自覚して、悠真との関係をちゃんと終わらせたい」


「もう戻れないのか?俺じゃだめ?」


「……っ、裏切ったのは悠真だよ」


「そうだよ、裏切ったのは俺で傷つけたのも俺で、わがままいってる自覚だってあるよ。だけど、大事なものをそう簡単に手放せねえよ」


「なら、なんで裏切ったの!?そこをどう処理すればいいの?」


「っ、……」


「気持ちが変わることは仕方ないよ、悠真がその子に引かれたことは仕方ない。恋だもん。止められないもん。だけど、今の悠真は卑怯だよ!ひどいよ、わたしが新しい恋をしたらいけないの…?」


「……っ、そいつは本当にひなたを幸せにできんのかよ!!」


「っ!……なんで、なんでそんなこと聞くの!」


「今のひなたは幸せそうに見えない」


「そんなこと悠真にわかんないし、悠真が決めることじゃないよ!!」


「俺といた頃のひなたと違う、」


「それは悠真の幻想だよ!!」


「そうじゃない!…ひなたそのものが変わってんだよ……っ。どんな男と付き合ってんだよ、せめて本当に大事にしてくれる男と付き合ってよ、諦めつかないじゃん」


そういって悠真は震える腕でわたしを抱き締めた。


「諦めつかないのは悠真の勝手だよ!好きな人ができたの、それ以外答えなんてないよ……!!」

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