第24話

「しかも、最近秋人に年下の彼女が出来たんです!秋人にはもったいないぐらいの美人さん!」


「まじ!?…生意気な」


「まだ16歳であのキレイさはやばい!将来はもっとすごいと思います」


「秋人にはもったいねえなー。俺が代わりにもらってやるかな」


「10以上も年上のおじさんなんて、紗良ちゃんも願い下げですよ」


バサッ!!


折り畳まれた新聞が飛んできて、思いっきり笑ってたわたしの顔にヒット。



「店長痛い!暴力反対!」



「おじさん扱い受けた俺の心も痛いわ!!」



なんだよー!本当のことじゃん。


なんて怖いもの知らずに発言できなくて、わたしは黙って目の前のコーヒーを手に持った。



投げつけた新聞は読み終わったもののようで、今度は他の新聞に目を通していた。


文字が細かくて見えないんだけど、日本語??じゃない気がした。


さっきまでのそういう雰囲気はキレイに吹き飛んで、今はまったりした空気が流れてる。


あのまま店長にヤられなくてほんとによかった。


自分のことも嫌いになっただろうし、店長もきっと後悔したはずだ。



一時の気の迷いにバイトの子はリスクが大きすぎる。



「恵里さんもこの部屋よく来てたんですか?」


「恵里と別れた後にこの部屋借りたから、恵里とヤるときはラブホ」


「赤裸々ですね」


「恵里菜からほとんど聞いてんだろ?隠す必要もねえし」


「一緒になる選択は考えなかったんですか?」


「……考えたよ。お腹の中に一人の命があって、簡単に下ろしてくださいなんて言えねえし、一緒になる覚悟もあったよ」


「なんで、下ろすことにしたんですか?」


「最後の最後まで、恵里菜と一緒になるつもりで考えてた。そもそも俺が原因だし、責任取るのが恵里菜のためだと思った。でも、……一緒になっても子供を幸せにする自信がなかった」


「本命彼女のことがあったからですか?」


「もう別れる準備は出来てた、もうほぼほぼ俺の彼女は恵里菜だった。…実蔵には恵里菜が大人の女性に見えても、実際は母親になりきれない女だよ」




ガツンーーー



と、鈍器で殴られた感覚だった。


店長の言葉も衝撃だったし、冷たくいい放つ言葉も、恵里さんには当てはまらなくて、わたしを捨てた母親と恵里さんが同じたということも、信じられなかった。



「俺と付き合う前も元旦那と何回か会ってたし、寂しいのか男も多分、いたはず。俺と関係を持つまでは彼氏もいた。娘よりも自分をとる、そんな様子もあったし、子供が産まれてもそんな状況ならケンカが耐えないと思った」


「恵里さんが変わることは考えられなかったんですか?」


「あいつの娘のことなのに、何度も衝突した。母親になりきれない恵里菜に悩んだし、今後二人で育てていくうちに自覚がもっと出てくればって思ったけど、恵里菜のせいにしながら、おれ自身にその覚悟がないことも気づいた」


「……」


「責任逃れで情けねえけど、恵里に謝って、お金渡して、下ろしてもらった。恵里菜を傷つけたんだ、そんなんで俺の側にいるなんて無理だし、離れていくのを引き留めなかった。最近彼氏ができた話を聞いて、安心した自分がいた」


「店長はもう恵里さんに気持ちはないんですか?傷ついた恵里さんの傷を、自分が癒そうとか……」


「思えねえだろ、俺だったら2度と顔も見たくねえよ」



わたしが恵里さんの立場だったらおなじことを思った。


憎いし悔しいし、やり場のない感情が込み上げる。


顔なんて2度と見たくない!



恵里さんだってその感情を持ったはず。


なのに、忘れられなくて、気持ちがなくならなくて、今も想っているんだ。



辛い恋は、終わらせることがなんで難しいんだろ。


無意識に悠真がつけたキスマークの場所を掴んでいた。

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