第11話

「昼間電話したけど出なかったの。折り返しの電話もなかったから直接来たのよ」


「恵里ちゃんも大変だね、こんなめんどくさがりの男を持つと」


「おいおいめぐちゃん語弊があるぜ。俺はめんどくさがりでも恵里ちゃんの男でもないから」


「……」


一体どういう関係なのだろうか…?


確かめることが出来る雰囲気でもないし、来客を知らせる音楽がなったので、ひとまずそこを離れることにした。


その後恵里さん?と店長の話は済んだようで、そのまま恵里さんはお店に残ってめぐさんと談笑したり裏で仕事をする店長と話をしていた。


わたしから話しかける勇気もなく、いつも通りの時間で休憩に入ることが出来た。


休憩に入るわたしと入れ替えで店長がキッチンに戻り、休憩スペースには私と恵里さんの2人になった。


昼間のうちに用意した今日の夕飯、お弁当を電子レンジで温めながら瓶ビールの空き籠で座るイスを確保する。


視線を感じて顔を上げると、こちらを見ていた恵里さんと目が合う。


「え…と…?」


「実蔵さん、だっけ?」


「あ、はい。実蔵ひなたです。お姉さんは、水沢恵里菜さん、ですよね?」


「うん、恵里でいいよ。わたしもひなって呼んでもいい?」


「はい!嬉しいです!」


見た目の美人と色気で話しかけにくいオーラだったけど、実際に話してみるととても気さくで人懐っこい印象だった。


「ひなは今いくつ?」


「21です。大学3年生で昼間は大学に通ってるので、基本夜だけシフトいれてます。恵里さんは…」


「いくつに見える?なーんてね。めぐとアホ店と同い年。あの2人と並ぶとどうしても年上に見られがちだけどね」


「恵里さんのスタイルの良さと漂う色気がやばいっす!これを目の当たりして店長はよく平気だなーって思います。男性として大事な機能が衰えてるんですかね」


「聞こえてんぞ実蔵」


「ひい!!」


裏の冷蔵庫に在庫を取りに来た店長に、いちばん聞かれたくない下ネタを聞かれてしまった。


「常に絶好調なんだけど、実蔵に確認してもらうかな」


「絶っっ対嫌です!勘弁してください!」


「はあ!?」


「もううるさーい。早く戻んなよ」


恵里さんの声にぶつぶつ文句を言いながらキッチンへと戻っていった。


存在を忘れていたお弁当を思い出して、話の途中だけど空腹も限界だったので食べ始めることにした。


「あいつっていつもあんな感じ?」


「そんなことないですよ。下ネタいうところは初めてみたし、普段めぐさんにべったりだけど私にセクハラすることなんてありません」


「そうなんだ、」


「恵里さんがいるから挑発したかったんじゃないですかね?」


「……」


「昔付き合ってた、もしくは彼氏彼女、それともお互い感情を抱いている、とか?」


「当たり、今は関係をもってないけど、昔はそういう関係だった。だけど、元カノではないって言ったら、どういう意味かわかる?」


「……はい、」


そう話した恵里さんの顔を見たら、胸がきゅーっと締めつけられた。

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