11月

店長の元カノ

第7話

戻れるなら戻りたい。


だって本気で好きだったもん。


悠真は4つ下でまだ高校生だったけど、本気で結婚も意識したもん。


悠真と将来のことも話したし、このまま一緒にいれることを信じてた。


でも、それを全部裏切ったのは悠真だよ。


全部全部、嘘になっちゃったんだよ。


元になんて戻せない。


1回の浮気だって許せないの。


だってそれは、本気で悠真が好きだから。


大好きだから苦しくて許せなかったんだよ。







せっかく大学も休みでバイトも休みの今日はとことん寝てやろう。


昨日の悠真からの電話も私にダメージを与えていたしと、一度起きた朝から二度寝を始めていた。


ずいぶん寝ていたと思う。


悠真が夢に出てきて、電話の着信音で徐々に覚醒していく。


「ん……」


あまりになるスマホに眠ることを諦め手を伸ばす。


「はいもしもし?」


「もしもし、今起きたのか?」


「ん、今起きた…悠真早起きしすぎだよ、こっちは昨日寝たの深夜だよ…」


なんて何時も通り話を始めて気づいた。


ディスプレイを確認していないことを。


そして、悠真の声よりも少し低く落ち着いた声だったことを思い出す。


「……実蔵、誰と勘違いしてんの?」


「…ひいいい!ててて店長!!」


「お前は誰からの着信か確認せずに電話に出るのか」


「すすすすすみません!!朝から失礼を働きすみません!!」


「てか朝って時間でもねえけど」


「今日は大学もお休みなので、寝溜めしようと思って」


「寝溜めって本当は出来ないらしいよ。休みのとこ悪いな、急なんだけど今日キッチンの瀬名が休みなんだわ、俺がキッチンに回ることになったから、代わりにホールにでてほしいんだけど、予定どう?」


「え!?あ…何時からですか?」


「何時も通り夕方から、上がりもいつもより早くていいから、来れそうなら来てほしいんだけど…」


「大丈夫です!17時からですね」


「助かるわ」


「いえいえ。それよりも店長は今日の出勤なんですね。休む日ちゃんともらってますか?」


「毎週水曜日と木曜日に休みもらってんだけど、なんだかんだ仕事で出てるんだよな」


「大変ですね…」


なんとなく感じていたことだけど、私が入るシフトの曜日はほとんと店長がいるときで、反対に店長がいないときに出勤したことがない。


男性陣のクセガ強いから、泣かされないように守ってくれてるのかもしれない、なんて思っていた。


ま、わたしにとっていちばん怖いのは店長だけどね。


「実蔵も明日休みだろ?夜予定あんの?」


「今のところはないですねー…」


「…飯でも行く?」


「え、いいんですか!?」


「おい実蔵、奢ってくれるんですかって気持ちがダダ漏れだぞ」


「助かります!明日絶対ごはん行きましょうね!」


「なに?金欠なの?」


「いえ!ちゃんと貯めてるんですけど、今ほしいアイドルの写真集があって…」


そんなこんなで店長とご飯にいく約束が決まった。


とりあえず、まだ寝る余裕があるから三度寝をしよう。


明日の予定はまた今日出勤したときに話せばいいや。


そんな感じだった。


今日の夜に起こる出来事なんて、想像なんてしてなかったんだ。

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