店長には4人の彼女
第4話
10月20日からスタートしたバイトにも徐々に慣れてきた頃、空いている時間は店長とめぐさんと話す機会が増えてきた。
めぐさんと先輩の西野さんは同棲しているらしく、ラブラブぶりが羨ましかった。
「めぐさんと西野さんの話聞いていると彼氏欲しくなります」
「ひなちゃんは彼氏いないの?」
「別れたばっかなんです。それもあまりいい別れ方じゃなくて、夏に別れたはずなのに2週間前までごたごた続いてて」
「結構揉めて別れたんだね」
「当分恋愛はお休みしたいと思ってたんですが…めぐさんたちが羨ましすぎる!!」
「一緒に長い間いたらケンカもあって大変だよー」
なんて横から口を挟んだのは、イスに座って伝票をまとめていた店長。
「めぐさんが言うなら納得できますが、店長がいうとえー?って感じます」
「なんだと!?」
「だって店長って、人と長い間一緒にいるなんて無理そうです」
「ああ!?」
最近ちょっと思うんだけど、もしかしたら店長はいじられドMじゃなくて隠れヤンキーじゃないかって。
こんな怖い目を向けている人がドMな訳がない!てか、なんで私ばっか怖い店長に会うの!?
「めめめめめぐさん!本当に店長はいじられキャラなんですか!?隠れヤンキーじゃないんですか!」
「え?桐山くんて隠れヤンキーだったの!?」
「めぐちゃ~ん、そんなわけないじゃんよ~」
「(嘘だ!嘘だ!)かわいい人限定ででれでれするんだ!」
「心の声漏れてんぞ」
「っ!!」
店長の鋭い突っ込みに急いで口を両手で塞いだ。
最初に見た店長の印象がやっぱり当たっていたんだろうか。
普通に話す分には優しい…?印象があるのに、ときたま見る冷たい表情やバックヤードで過ごす店長の表情にギャップがありすぎて、戸惑いを隠せない。
「そういえば、店長は彼女いるんですか?」
てっきり聞いていないと思っていた店長に自分の恋愛事情が知られてしまったので、店長の恋愛事情だって聞いとかないと不公平だ。
「俺?うーん、めぐちゃーん、なんて言ったらいいと思う?」
甘えるようにめぐさんに視線を送る店長を見て、「言えない関係!?」と心の声が外に漏れていた。
「違う違う!この人だらしなくて…女遊び激しいんだよね」
「失礼な。女が勝手に寄ってくるんだよ。俺のせいじゃねえし」
「…桐山くん、隣でドン引きしているひなちゃんを見てみなさい」
「…うーわこいつまじ最低って顔してんね。おい実蔵!顔に出すんじゃない!仮にもバイト先の店長だぞ!」
仮にも店長って言っちゃうんだ!?
仕事が出来るのに、仕事している店長はかっこいいのに、こんな風にふざけている店長は尊敬できなーい!!
しかも女遊びが激しいなんて最悪!最低!
「…じゃあ、付き合っている人はいない寂しい独り身ですが?」
「それはお前だろ」
「ひぃ!」
おおおおお前って言った!いつも実蔵さんって呼ぶ店長が!お前なんて働いてから初めて聞いたよ!
ちょっとへこんだ私を全く気にせずさらなる爆弾発言を投下した。
「え?彼女はいるの?」
「今のところ4人ね。勝手に彼女面してるだけだけど」
めぐさんの質問に最低な発言をした。
もう無理だ、絶対この人とプライベートでの関わりもご遠慮したいです。
今日は私がラストまで残る日、めぐさんと終わりの挨拶を済ませて残りの時間でやるべき仕事をこなしていく。
自分の仕事がひと段落したらしい店長は暇になったのか、明日の支度をしている私の隣にイスを持ってきて座った。
「……店長暇なんですか?」
「ひと段落したから休憩」
「お疲れ様です。…煙草の方がいいんじゃないんですか?」
「隣にいるの嫌なの?」
「いえ…疲れてるなら煙草の方がいいかなー?って思って」
「……」
「心配してくれてるんですか?」
「……仕事は慣れた?」
「はい。店長とめぐさんの熱々ぶりも見慣れました」
「それ絶対西野に言うなよ?俺殺されるわ」
「ははは!大丈夫ですよ。先に4人の彼女に刺されますから」
店長は一瞬動きを止めた気がする。
私はさほど気にせず作業を続けていると、店長がふいに変なことを言いだした。
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