第3話

発注書の確認が終わった店長が後ろポケットからスマホをとりだした。


「店長ミッキー好きなんですか?」


「ん?ああ、そう。ミッキーすげー好きなんだよね」


スマホをとりだしたときに見えたスマホカバーはおしゃれなミッキー仕様だった。


気づいた私に見えるようにスマホを裏返してくれた。


ちなみに私のスマホケースは透明でなんのひねりもない。


「意外!実蔵さんノーストラップなんだね」


「たまに付けたりするんですけど、落ち着かなくていつもとっちゃうんです」


「女の子ってじゃらじゃら付けてる印象だよ。めぐちゃんなんてとくに典型的なね」


「はははっ!入山さんは女子力高いですから」


会話を交わしながらもラインを起動し、その場でフルフル機能を使って店長と連絡先を交換した。


店長がグループに追加されたか確認するためにスクロールしたら、猫のアイコンを使った店長を発見。


「かわいい~!店長は猫派なんですよね」


「かわいいさがたまんないよね」


「懐かれるのもめんどくさそうだし、猫の気まぐれな感じが店長に合ってますよね」


「……」


店長が驚いてこっちを見ていることに気づかず、支度していた荷物を持って帰りの挨拶をしながら裏口からお店を出た。




このときから、私たちは正しい距離を見失っていたのかもしれない。


店長は先に気づいていた?


私は無意識のうちに、店長の固く閉ざした扉をノックしていた。


私がそれに気づくのはもう少し後のこと。

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