永遠に/今更だけど。

第6話

気持ちいい浮遊感を感じて目を覚ますと、ソファーの上で寝ていたはずなのに、ベッドの上にいた。


 そして、目の前には、何度も見て来た愛しい人の寝顔。


 ソファーで雑誌を読んだまま、うたた寝をしていたみたい。


 服はそのまま、カーテンの向こうから見える日差しはまだ明るい。


 思ったよりそんなに寝ていなかった。


 今日は午後から2人でショッピングデートに行く予定だったことを想い出す。


 気持ちよく寝ている結城くんには申し訳ないけど、起こすために声をかけた。


「結城くん…、結城くん、起きれる?」


 そんなに深い眠りじゃないみたいで、私の声で結城くんが動きだす。


 眠いのと起きたいのとで顔を歪ませる結城くんに、もう一度声をかけた。


「結城くん」


「…果歩もだろ」


 結城くんから聞こえた声は、寝起きだからか、いつもより低くて少しかすれた感じ。


 新鮮だなー…なんて呑気に思って、起きそうな結城くんを見つめる。


 目だけを開けて、真剣な目差しを私に向けた。


「果歩も、”結城”だろ。いつまで結城くんって呼ぶの?」


「…そ、うなんだけど…」


「結婚して結構経ったし、そろそろ”結城くん”は卒業してくれないかな」


「……は、恥ずかしくて」


「そろそろ名前で呼んでほしいんだけど」


「うん、うん、わかってるんだけど…」


「”結城”さん、名前で呼んでよ」


「…りょ、亮…くん?」


「呼び捨てかくんづけで迷ってるの?」


「それもあるかもだけど、ずっと結城くんって呼んでたから…」


「果歩も結城くんになったんだよ。結城果歩さん」


「うん…、うん、照れる、恥ずかしい…」


「もっと恥ずかしことしながら、名前呼びになれる?」


「え…!でも、今日はショッピングに行く予定あるし…!」


「そろそろ子どもほしいし、ちょうどベッドの上だし、いいじゃん。果歩が亮って呼ぶのに慣れたら、解放してあげるよ?」


 腕を引っ張り自分の腕の中に閉じ込める亮くんに、今日は離してもらえないと観念した。












【今更だけど】


(あの声で亮くんって呼ばれるのが癖になっちゃったかも)

(亮くん…!)

(果歩と再会するまでに溜めたものは、愛しい人に満たしてもらわないとね)


【結城果歩になりました。】







完結。

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