愛してる③/結城くんとアルバム

第4話

普段使わない部屋の整理をしていたら、結城くんの卒業アルバムを見つけた。


 中学校の卒業アルバム。


 私が、最後までいることが出来なかった、転校する前の中学校。


 懐かしさと寂しさを感じながら、表紙をめくる。


 見慣れた顔、仲の良かった友人たち、少しだけ大人びて見える卒業写真の数々。


 その中で、すぐに目に飛び込んでくる「結城 亮」の文字と写真。


「結城くん、卒業写真でもかっこいいよ…」


 実際の結城くんと変わらない、まっすぐに見つめるイケメンの顏がそこにあった。


 クラスの名簿をばーっと見ると、結城くんに恋してるって噂のあった女子がちらほらいて、修学旅行、結城くんと一緒に行ったんだ、とか、結城くんと運動会も、文化祭も、一緒にやったんだって。


 羨ましい気持ちと嫉妬が湧いてきて、胸がぎゅーっとしてつけられた。


 中学校のボタン、誰かにあげたのかな…。


 めくるアルバムの中に、私が見れなかった結城くんを見つけては、愛しさを感じていく。


「果歩ってそんなに中学のときの俺が好き?」


 声が聞こえて、はっと顔を上げると、あぐらをかいて私の顔を見つめる結城くんが目の前にいた。


「…中学のときの結城くんが好きなんじゃなくて、”結城亮”が好きなの」


 目の前の結城くんをまっすぐ見つめて言葉を発する。


「私が転校した後も、モテたでしょ。麻美ちゃんも結城くんのこと好きだったし、尚子ちゃんも結城くんのこと好きって言ってたし…」


 結城くんのクラスの女子たちの写真を指差しては、結城くんに問いただす。


「修学旅行は誰と一緒の班だったの?運動会は、3年のときも応援団に入ったの?リレーは参加した?文化祭は…誰と回ったの?」


 溜めに溜めた気持ちを吐き出す私を、結城くんは優しい瞳で見つめていた。


「修学旅行の班は果歩と一緒になりたかったし、団長する姿は果歩に見せたかった。リレーだってアンカーで1番取ったんだよ、めちゃくちゃかっこよかったと思うのに、応援席に果歩の姿ないんだもん。文化祭だって、果歩と2人で回りたかった。実際は泰輔たちと回ったよ」


 結城くんの返事が耳に届くたび、泣きたい衝動に駆られる。


 取り戻すこともできない後悔だけど、結城くんが想い出の中に私を置いていてくれたことを聞けて、嬉しかった。


「告白された?たくさん」


「…された、かな。でも、果歩だってたくさんされたでしょ」


「……」


「…俺以外と、恋愛したかった?」


「できなかった。いいなってちょっと気持ち動くときがあっても、結城くんを重ねてるだけって、わかったから」

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