愛してる②/結城くんと寝顔

第2話

「…、夢か」


 目が覚めて、最初に見えた天井を見て、私が見ていた記憶が夢だったと気づく。


 夢だけど、夢じゃない。


 結城くんと再会したのは、実際に本当のことで、あの後、大学中でちょっとした話題になってしまった。


 隣で眠る結城くんの無防備な顔を見て、思わず頬に触れたくなる。


「結城くん、年取らないな…」


 再会したときから、6年の月日が流れたのに、結城くんの肌は変わらずきれいだし、目を閉じる顏も整ってるし、髪の毛もさらさら。


 寝癖がつかないのかな?ってびっくりするぐらい、どこを切り取ってもかっこよかった。


 中学の頃と違うのは、髪色が茶色になったこと。


 本当は茶色が地毛で、中学のときは黒く染めていた事実にも驚いた。


 結城くんの寝顔をしばらく見てから、私はベッドから移動する。


 寝室の扉を開けて、リビングを抜けて、キッチンのシンク前に立ち、コップ1杯の水を飲んだ。


 結城くんと再会したときの夢。


 今でもあの時の気持ちを鮮明に覚えている。


 長かった後悔が報われたと同時に、結城くんに2度目の恋をする覚悟を決めた。


 再会してすぐ、結城くんがもっとかっこよくなっていたことに気づいたし、抱きしめる腕は細いのに力強く、胸板の硬さから鍛えていることもわかる。


 中学の頃から身長が高い方だったのに、女性にしては身長が高い私が見上げるぐらい、さらに結城くんの身長は高くなり、離れている間のことが不安になった。


 絶対モテたよ、絶対彼女いたよ、だって、こうやってすぐに抱きしめるぐらい慣れてるもん。


 再会の涙が違う涙に変わりそうだった気持ちを思い返したときに、腰に巻きつく慣れた腕に気づいた。


「…結城くん、起きた?」


「回想中だった?意識飛んでたよ」


「……」


 回想中、という言葉に、そんなしょっちゅう想い出に飛んでないよって思ってむくれたけど、「果歩、よく意識飛んでるよ」と結城くんが追い打ちをかける。


「うわの空で、目の前の俺より過去の俺を大事にするじゃん」


 ぎゅーーーっと抱きしめる腕を強めて、肩に顔を埋めた。


 身長差があるのに、大きな体を丸めて私に抱き着く結城くんは、中学生の頃の面影がない。


 あの頃には知ることが出来なかった結城くんの一面。


 甘えん坊なところも、意外と抜けてるところも、あの頃より男らしくなったところも、全部含めて好き。


 いくつになっても、今の結城くんに恋をする。


 お腹に巻かれた結城くんの腕に触れようとすると、結城くんの腕が先に動きだしたのがわかった。


 意思を持った手はTシャツの裾から中に入り込み、敏感な上の部分に向かって進み出す。


「ゆ、ゆうきくん…!!」


「中学生の俺が出来なかったことしたら、今の俺に夢中になってくれる?」


「今でも充分…!」


夢中だよ…というセリフは最後までいうことができず、もう片方の手で振り向かされた唇は結城くんの舌で塞がれた。

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