恋が終わるまで⑩/終着点

第44話

望月くんに、LINEをしようか、すごく迷った。


 毎日、毎日、すごく迷った。


 お互いの大学の忙しい時期と被って、わたしと望月くん、はせくんのシフトは、全部ばらばら。

 

 被るときもなく、バイトに顔を出してはレポートやっての、繰り返し。


 出勤して、確認するノートに、望月くんとはせくんのハンコを見つけて、存在を感じたり。

 

 菜子さん、久保田さんから様子を聞くので精一杯。


 望月くんに気持ちが向いている状態で、はせくんと望月くんのことを話題にすることも、裏で連絡を取り合うことも、できない。


 時間だけが過ぎていって、気持ちだけが行き場を失くして募って…。


 LINEがあるのに、勇気を出したら、飛ばすことができるのに、いつもいつも、画面の前で、躊躇する。


 新しいシフトをもらったとき、一番に目に入ったのは、望月くんと被った日にちだった。


 お互いに、大学の予定が落ち着いて、ちらほらと被って入るシフトが見えてくる。


 はせくんより先に、望月くんに合う。


 嬉しい気持ちを強く強く噛みしめた。

 

 会えることが嬉しくて、望月くんがどんな状況なのか、考えることもせず…。







 ぽかーーん…と、空いた口が開いたまま。


「…里帆ちゃん、フリーズしたよ」


「それは…、結構なインパクトあるから、ね…」


「見慣れてきたと思うわたしたちでも、まだ、ちょっと、ね…」


 わたしを間に挟んで、各々の感想をいうのは、望月くんの様子を先に見ていた菜子さんと、久保田さん。


 わたしの目の前に立っている望月くんは、若干の気まずさを抱えたまま、わたしたちの様子を伺っていた。


 出勤してきた望月くんが挨拶してくれて、嬉しさのあまり笑顔で振り返った顔は、一瞬で間抜け顔へと変化。


 フロアに入ってすぐに声をかけてくれたから、大学終わりのリュックを背負ったままだし、帽子をかぶったまま。


 だけど、明らかに違和感が、あるの。


 帽子をかぶることも珍しいんだけど、帽子の外に出るはずの毛が…ない。


 おずおずと帽子をとった望月くんの頭は、野球少年のような坊主になっていた。


「え…、え?え?え?」


 菜子さん、久保田さんと交互に見たあと、目の前の望月くんに向き直ると、驚きすぎる現実が、そのまま残っている。


「なにが…あったの?」


「話す時間、もらえる?」


 覚悟を決めた様子を感じさせる望月くんに、わたしはこくんと頷き答えた。


「今日のバイト終わりに、説明するから」


 優しく微笑む望月くんは、出会った頃の素敵な姿で、なにも変わってない。


 なにも変わってない、わたしが好きになった、望月くんのままだった。


「うん、ありがとう。たくさん、お話しようね」


 どんな話でも、どんな言葉でも、望月くんから聞けるなら、嬉しかった。


 ずっとずっと、話したかったから、会いたかったから。


 しばらく話せなかった本音を、今日、ぶちまけよう。


 後悔はもう、残さない。

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